猫ちぐら

猫ちぐら（ねこちぐら）・猫つぐら（ねこつぐら）

猫ちぐらとは、新潟県と長野県で作られる猫のための寝床であり、稲わらや紙紐を編んで形作られる伝統的な工芸品です。これらは農村で育まれた技術を基にしており、地域ごとに「猫ちぐら」と「猫つぐら」と呼ばれるバリエーションがあります。特に新潟県の関川村や長岡市、出雲崎町で盛んに作られています。

背景と由来

猫ちぐらのルーツは、昔、農作業をしながら幼い子供をあやすために作られた藁で編んだゆりかご「つぐら」にさかのぼります。このつぐらは、あかんぼうを入れやすく、かつ安全に見守れる形を持っていました。その後、このアイデアが発展し、飼い猫のための寝床へと変化していったのです。

近年、一般的に見られる猫ちぐらは、かまくら型をはじめ、様々な形状が存在し、作家の個性が表れる多様性があります。猫は狭くて暗い場所を好むため、猫ちぐらは彼らにとって居心地の良い空間となっています。

製作と文化

猫ちぐらを作るためには約1週間の時間がかかり、使用する稲わらの量は約20把と言われています。製作者各自の技術やスタイルによって仕上がりが異なるため、地域にはさまざまな名手が存在しますが、彼らの高齢化が進んでおり、今後の作り手の育成が重要視されています。また、長野県栄村にある郵便局では、風景印として猫つぐらのデザインを採用しているなど、地域の文化としても根付いています。

歴史的価値

猫ちぐらの歴史は江戸の後期にまで遡ります。浮世絵師の歌川広重が描いた作品には、猫ちぐらの中で猫がくつろぐ様子が収められています。このように、猫ちぐらは単なる寝床にとどまらず、歴史的な文化財としても評価されています。特に関川村では、村の豪農が自身の愛猫のために作ったとされ、地域の伝統工芸として大正時代から存在が確認されています。1980年代に入ってからは商品化も進みました。

特徴

猫ちぐらの主な材料は藁であり、この素材は保温性と通気性に優れ、猫が一年を通して快適に過ごせるように設計されています。加えて、耐久性を高めるために紙紐や合成樹脂素材が混ぜられることもあります。しかし、手に入れるのが難しく、数年待ちの状態となることがあるため、模造品も広まっています。オークションサイトなどでは、藁以外の材料を使用した製品も見受けられます。

その他の文化的な側面

関川村のお野立公園には「いやしの猫のモニュメント」という猫ちぐらを模したオブジェがあります。このオブジェは漫画「魔法陣グルグル」にも登場するなど、地域の文化やアイデンティティを象徴する役割も果たしています。さらに、猫ちぐらは音楽にもインスピレーションを与えており、中島みゆきやスピッツの楽曲にも触れられています。

猫ちぐらは、その独特な魅力とともに、地域文化の重要な一部として今後も受け継がれていくことでしょう。

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