猫のゆりかご

『猫のゆりかご』（ねこのゆりかご、Cat's Cradle）は、アメリカの作家カート・ヴォネガットによる1963年に発表されたSF小説です。本書は、壊滅的な力を持つ発明品「アイス・ナイン」を中心に物語が展開され、科学、宗教、そして国家に対する鋭い風刺が特徴です。ヴォネガットのユーモアと哲学的な視点が融合し、彼の代表作、かつ出世作として評価されています。

あらすじ

物語は、ノンフィクション作家のジョーナが主人公です。彼は原子爆弾が日本に落とされた日についての書籍を執筆しており、その過程で故フィーリクス・ハニカー博士の息子であるニュートに接触します。ジョーナはハニカー博士が過ごしたニューヨーク州イリアムに向かい、取材を行います。そこで、ハニカー博士があらゆる液体を固体化する「アイス・ナイン」という物質について言及していたことを知りますが、博士の同僚であるブリード博士からはその存在を否定されます。

やがて、ジョーナはハニカー博士の兄、フランクがサン・ロレンゾ共和国に住んでいることを知り、取材のためにその国に向かいます。サン・ロレンゾでは、ボコノン教という宗教が広がっており、独裁者であるパパ・モンザーノの治下で人々が生活しています。飛行機の中で、ジョーナは大使のミントン夫妻や実業家のクロズビー夫妻、ニュート、そしてその姉のアンジェラと出会います。

サン・ロレンゾに到着したジョーナは、パパ・モンザーノが病気で倒れたことを知ります。病院の経営者ジュリアン・キャッスルとその息子フィリップと出会い、フランクに大統領に就任するよう依頼されます。ジョーナはその提案を受け入れ、美しい養女モナを許嫁とすることに。しかし、就任前にパパ・モンザーノがアイス・ナインを飲んで自殺し、その結果、全世界の海が凍ってしまう事態が発生します。

ジョーナはモナと共にシェルターに逃げ込み、数日後に地上に出ると、すでに生命がすべて失われた世界に変わっていました。生き残ったのはジョーナとクロズビー夫妻、フランク、ニュートだけです。彼らは自給自足の生活を送りつつも、次第に絶望的な状況が続きます。最終的には、ボコノンが現れ、彼が『ボコノンの書』の最後の章について語るところで物語は幕を閉じます。

主な登場人物

- ジョーナ: 本作の語り手であり、元キリスト教徒からボコノン教徒に改宗したノンフィクション作家。発見した天使の像を通じて自らのアイデンティティを再確認します。
- フィーリクス・ハニカー: 原子爆弾の開発者で、アイス・ナインの発明者。様々な奇行が目立ち、家庭を通じて物語に影響を与えます。
- ニュートン・ハニカー: ハニカー博士の息子で、小人。アートや哲学に触れることを好むキャラクターです。
- フランクリン・ハニカー: ニュートの兄で、イリアムでの失踪後にサン・ロレンゾで大臣として出世します。
- ボコノン: サン・ロレンゾの宗教を創設した信者で、非常に魅力的なキャラクター。彼の宗教的な教えが物語の核となります。

用語集

- アイス・ナイン: あらゆる液体を固体化させる物質。物語の中では、世界滅亡の引き金となる重要な要素です。
- サン・ロレンゾ: 登場人物たちが訪れる独裁国家。重要な舞台として物語が展開されます。
- ボコノン教: 宗教的な信念体系であり、サン・ロレンゾの住民によって広まった特徴的な宗教です。

この作品は、科学の危険性や人間の愚かさ、神や国家に対する疑問を抱かせる内容となっており、読み応えのある一冊です。

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