玄武 (朱徽煠)

玄武（げんぶ）は、中国明代において、岷荘王（びんそうおう）の息子である朱徽煠（しゅきそう）が、自立を企図して使用した私的な年号です。この年号は、西暦1451年の旧暦12月に用いられました。

記録によれば、この年号は「元武（げんぶ）」や「玄元（げんげん）」とも表記されることがあります。しかし、「元」の字は、清の康熙帝（こうきてい）の諱である「玄燁（げんよう）」を避けるために代用されたものと考えられています。つまり、本来は「玄武」であったものが、諱を避ける慣習によって異なる表記が用いられたということです。

玄武は、公式の年号ではなく、あくまで私的なものであったため、明の正史や公的な記録にはほとんど登場しません。そのため、この年号に関する情報は、当時の史料を丹念に調査することによって、部分的にしか把握することができませんでした。岷荘王は明の太祖である洪武帝の第18子であり、その血筋を引く朱徽煠が自立の象徴として、この私年号を用いたと考えられています。

玄武に関する史料として、以下のようなものが挙げられます。

『明英宗實録』巻209　景泰2年10月2日条：玄武の年号について言及があります。
陶棟『歴代建元考』「歴代擬議不用年号表」：玄武の年号が掲載されています。
談遷『国榷』巻30　代宗景泰2年12月条：玄元という表記で記録されています。
查繼佐『罪惟録』巻59　岷荘王楩条：玄元という表記で記録されています。
葉維庚『紀元通考』：元武という表記で記録されています。

これらの史料を総合すると、玄武という年号が、様々な形で記録されており、また、当時の政治的な背景や慣習によって、表記が変化していたことがわかります。

また、以下の参考文献も玄武についての情報を補完する上で重要です。

李崇智『中国歴代年号考　修訂本』（北京：中華書局，2001年1月）：玄元に関する記述があります。（212-213ページ）
* 鄧洪波編『東亜歴史年表』（台北：台湾大学出版中心，2005年3月）：玄元に関する記述があります。（230ページ）

これらの文献を通じて、玄武が明代の歴史の中で、ごく一部の限られた期間に、私的に用いられた年号であったことが理解できます。

玄武の年号は、明朝の歴史において、一般的には知られていない私的な年号の一つであり、その使用期間も非常に短かったと考えられています。しかし、この年号の存在は、当時の政治情勢や皇族の動向を知る上で貴重な資料となります。特に、康熙帝の諱を避けるための表記の変化という点も、歴史的な背景を考察する上で重要なポイントとなります。

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