玉木重雄

ブラジル・サンパウロ出身の玉木重雄（たまきしげお）氏は、1971年2月25日生まれの元プロ野球選手（投手）です。ブラジル名はエンリケ・シゲオ・タマキ。日系ブラジル人として初めて日本のプロ野球界でプレーしたパイオニアの一人として知られています。

球歴：ブラジルから日本へ

ブラジルで日系3世として育った玉木氏は、カスペル・リベロ高校時代にブラジル選抜の一員として日本の選抜チームと対戦した経験を持ちます。1990年に来日し、社会人野球の強豪、三菱自動車川崎に入社。そこで投手として頭角を現し、1995年の第22回社会人野球日本選手権大会では、チームの勝利に貢献し最高殊勲選手（MVP）に選ばれる活躍を見せました。この実績が評価され、同年のドラフト会議で広島東洋カープから3位指名を受け、プロ入りを果たしました。

プロ野球での歩み：広島、そして楽天

広島に入団後、玉木氏は主にリリーフ投手として活躍しました。右腕から放たれる角度のあるストレートと変化球を武器に、中継ぎとして多くの登板機会を得ます。中でも2001年シーズンは、62試合に登板し防御率2.76と安定した成績を残し、ブルペンを支える重要な存在となりました。また、先発投手陣に手薄な際にはスポットで先発マウンドも経験し、試合を作れる投球を見せました。プロ入り後の1999年には日本国籍を取得しています。

2005年、楽天ゴールデンイーグルスへの無償トレードによってチームを移籍。新たな環境での活躍が期待されましたが、怪我などもあり登板機会は限られました。そして2006年 9月26日、球団から戦力外通告を受け現役引退を決断。「プロ野球に入れてよかった。悔いはない」と語り、11年間のプロ生活に幕を下ろしました。

ユニフォームを脱いだ後：スカウト、コーチ、通訳

現役を引退した玉木氏のキャリアは、野球界から離れることなく続きました。広島入団時に将来のスカウト転身の可能性が示唆されていましたが、2007年からは読売ジャイアンツの二軍コーチ補佐兼中南米選手の発掘担当に就任します。特にスカウトとしては、後にチームの主力となったウィルフィン・オビスポ投手の獲得に貢献するなど、その手腕を発揮しました。2012年限りで巨人を退団後、ブラジルへ帰国し、ヤクルト野球アカデミーのコーチとして未来ある子どもたちの指導にあたります。そして2022年からは再び巨人に戻り、今度は通訳として、国際色豊かなチームを支えています。選手、コーチ、スカウト、通訳と、様々な形で野球界に貢献し続ける稀有なキャリアを歩んでいます。

選手としての特徴とブラジルでの栄誉

投手としての玉木氏は、長身から投げ下ろす角度のある最速140km/h台後半のストレートが持ち味でした。これに加えて、スライダーや縦に大きく落ちるカーブ、そして得意球のフォークボールを組み合わせた投球を展開しました。特にフォークボールは左打者からの被打率が低く、右投手でありながら左打者を得意とした点も特徴的です。

日系ブラジル人初のNPB選手という歴史的な意義もあり、ブラジルのサンパウロ・リベルダーデ地区にある移民博物館には、彼の広島時代のユニフォームが展示されています。これは、ブラジルにおける野球コミュニティや日系人社会にとって、彼の存在がいかに大きな意味を持っていたかを物語っています。

主なプロ記録

玉木氏がプロ野球で記録した主な初記録は以下の通りです。

初登板: 1996年4月6日、対中日戦（広島）
初奪三振: 同上、ダネル・コールズから
初先発: 1996年4月14日、対阪神戦（甲子園）、敗戦投手
初勝利: 1996年9月1日、対横浜戦（広島）、救援登板
初セーブ: 1996年9月14日、対中日戦（ナゴヤ）、救援登板・完了
初先発勝利: 1999年4月9日、対ヤクルト戦（広島）
初ホールド: 2005年5月20日、対広島戦（広島）、救援登板
初打席・初安打・初打点: 1996年4月14日、対阪神戦（甲子園）、舩木聖士から先制2点適時打

背番号の変遷

プロ生活とコーチ時代の背番号は以下の通りです。

広島東洋カープ: 30 （1996年 - 2004年、2006年）
東北楽天ゴールデンイーグルス: 69 （2005年）
* 読売ジャイアンツ（コーチ）: 98 （2007年 - 2010年）、105 （2011年 - 2012年）

ブラジルで生まれ、日本でプロ野球選手として活躍し、引退後もスカウト、コーチ、通訳として国際的に野球に関わり続ける玉木重雄氏のキャリアは、日系人としてのアイデンティティと野球への情熱が結びついた unique なものです。

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