玉村豊男

玉村 豊男（たまむら とよお）氏は、1945年10月8日に日本画家である玉村方久斗氏の八男として東京都杉並区に生を受けました。東京大学文学部仏文学科を卒業後、在学中に2年間パリ大学言語学研究所に留学した経験が、後の人生に大きな影響を与えることとなります。

大学卒業後は通訳や翻訳の仕事に従事しましたが、1977年、32歳の時にかつてのパリ留学体験を元にした著作『パリ 旅の雑学ノート』を出版したことを契機に、文筆活動へと転身しました。本人はこのパリ留学について、「ワインを飲む習慣が身についたり、その後の人生にとって大きな転機となったが、当時は全く想像もしていなかった」と述懐しています。

1983年からは8年間、長野県軽井沢町で生活を送りました。そして、41歳の時に大きな病を患ったことも人生を見つめ直すきっかけの一つとなり、1991年には妻と共に長野県東御市へと移り住むこととなります。この東御市での生活が、後の活動の拠点となります。

東御市では、自ら農園を開墾し、ブドウ栽培からワイン醸造までを手掛ける「ヴィラデスト ガーデンファーム アンド ワイナリー」を2003年に開設しました。現在、同社の会長を務める傍ら、日本ワイン農業研究所株式会社の代表取締役社長として、日本のワイン産業の発展にも尽力しています。その功績の一つとして、2005年にはフランス農事功労章を受章しています。また、「『安心、安全、正直』な信州の温泉表示認定委員会」の委員を務めるなど、地域の様々な活動にも関わっています。

ヴィラデストで造られるワインは高い評価を得ており、「日本ワインコンクール」では、2011年に「ヴィラデスト ヴィニュロンズリザーブ シャルドネ 2010」、2014年に同2013、2015年には「ヴィラデスト ソーヴィニョンブラン 2014」がそれぞれ金賞を受賞しています。

エッセイストとしては、初期の『パリ 旅の雑学ノート』以来、旅、食、ワイン、田園生活、文化論など、多岐にわたるテーマで数多くの著作を発表しています。その筆致は軽妙洒脱でありながら、観察眼に富み、多くの読者を魅了しています。また、長年描き続けている絵画の分野でも知られ、箱根には「玉村豊男ライフアートミュージアム」が開館されています。

画家、エッセイスト、そしてワイナリー経営者として、長野の豊かな自然の中で、食と農、そして文化を実践的に結びつける活動を展開しており、そのライフスタイルは多くの人々の共感と関心を集めています。メディアにも度々登場し、その幅広い知識と経験に基づいた語りで、お茶の間にも親しまれています。

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