玉村雅敏

玉村 雅敏（たまむら まさとし）

日本の経済学および経営学の分野で活躍する玉村雅敏氏は、現在、慶應義塾大学総合政策学部の教授を務めています。その専門は、社会的な視点を重視したソーシャルマーケティング、公共組織の運営や効率化を目指す公共経営、効果測定や価値評価のための評価システム設計、そして公共的な意思決定のメカニズムを探求する公共選択論に及びます。

玉村氏の研究と実践は、理論的な探求に留まらず、社会における具体的な課題解決に深く根差しています。特に、企業が経済的価値と社会的価値を同時に創出するCSV（Creating Shared Value）戦略の推進、官民の連携による新しい社会システムの構築、さらには全国の自治体が進める地方創生戦略や長期的な総合計画の策定・実行に対する支援を積極的に行っています。

その活動の中核をなすのが、多様な評価システムの設計と応用です。公共組織の業績を測定し改善に繋げるための評価システム、政策の効果を測定し戦略を最適化する政策マーケティングのシステムなど、幅広い分野で評価の仕組みを構築してきました。また、人々の暮らしの質や幸福度といった、経済的な指標だけでは捉えきれない価値を可視化し評価する手法の開発、地域における人々の繋がりやソーシャルキャピタル（社会関係資本）を定量的に把握する試みにも注力しています。社会的な活動がもたらすインパクトを測る社会インパクト評価、地域経済の活性化に貢献する地域通貨、文化施設の運営戦略におけるミュージアムマーケティング、教育の質の向上を目指す学校評価、地域資源としてのスポーツを活用したまちづくり、組織や企業が社会に与える価値を評価する手法、さらには企業による「場づくり」活動の評価など、その開発・構築する評価手法は極めて多岐にわたります。

玉村氏の学歴としては、慶應義塾大学総合政策学部を卒業後、同大学院政策・メディア研究科にて単位を取得して退学し、博士（政策・メディア）の学位を取得しています。そのキャリアは、千葉商科大学での教員経験（助手、専任講師、助教授、客員助教授）から始まり、慶應義塾大学助教授を経て現職に至ります。この間、九州大学大学院での非常勤講師や、内閣府経済社会総合研究所、文部科学省科学技術政策研究所での客員研究員・研究官、さらには新潟市都市政策研究所や横須賀市での政策研究専門委員など、多くの研究機関や公的機関において要職やアドバイザーを務めてきました。

特に、慶應義塾大学SFC研究所では、所長を務めたほか、「社会イノベーション・ラボ」、「場づくりマーケティング・コンソーシアム」、「シェアタウン・コンソーシアム」といった先駆的な研究組織の代表を兼任し、社会課題解決に向けた実践的な研究を推進しています。また、天草市や鈴鹿市をはじめとする多くの自治体のアドバイザーとして、地域活性化の現場に深く関与しており、内閣府の地域活性化伝道師、総務省の地域力創造アドバイザーとしてもその知見を提供しています。

これらの多角的な活動と研究成果は高く評価されており、国際協力機構（JICA）理事長賞、地域活性学会賞、電子情報通信学会ヒューマンコミュニケーション賞など、複数の著名な賞を受賞しています。また、自治体経営、SDGs、CSV、地域づくり、評価システムなど、自身の専門分野に関する多数の書籍を単著、編著、共著、監修といった形で刊行しており、日本の社会課題解決や公共セクターの変革に関する議論に大きな影響を与えています。

玉村雅敏氏は、学術的な知識を基盤としつつ、公共および民間の様々な組織と連携しながら、社会全体の価値創造と持続可能な発展に貢献し続けています。

もう一度検索