王の帰還

J.R.R.トールキン『指輪物語』第三部：王の帰還

『王の帰還』（原題：The Return of the King）は、J・R・R・トールキンの代表作『指輪物語』の最終章を飾る第三部です。1955年10月20日に英国で出版され、物語はクライマックスへと向かいます。

構成

『王の帰還』は、『指輪物語』の第五巻と第六巻で構成されています。出版形態によっては、第五巻に『指輪戦争(The War of the Ring)』、第六巻に『王の帰還(The Return of the King)』という表題が付けられることもあります。日本語訳では、上巻・下巻として刊行されています。

また、巻末には作品世界をより深く理解するための「追補編」と、物語全体を網羅する詳細な索引が収録されています（版によって内容は異なります）。

表題について

トールキンは当初、『指輪物語』を六巻構成で考えていました。しかし、出版社の意向により三部構成となり、第五巻、第六巻、そして追補編が『王の帰還』という表題の下にまとめられました。トールキン自身は、この表題が物語の展開を説明しすぎていると考え、『指輪戦争』の方がより適切だと感じていました。

当初、第五巻は『指輪戦争』、第六巻は『第三紀の終り(The End of the Third Age)』というタイトルが提案されていました。これらの表題は、後の『Millennium Edition』で使用されています。

あらすじ

物語は、冥王サウロンの攻撃が目前に迫るゴンドール王国から始まります。

第五巻：指輪戦争

ガンダルフとピピンはゴンドールの都ミナス・ティリスに到着し、執政デネソールにサウロンの脅威を警告します。ピピンは、かつてデネソールの息子ボロミアに受けた恩義を返すため、デネソールの近衛兵として仕えることを決意します。モルドール軍が迫る中、デネソールは狂気に蝕まれていきます。ボロミアの弟ファラミアは、オークの大群からオスギリアスを守るという絶望的な作戦を強いられ、重傷を負って帰還します。絶望したデネソールは、自らと瀕死のファラミアの火葬を準備させます。ミナス・ティリスは、20万を超えるオークの大軍に包囲されます。

一方、ローハンでは、セオデン王とロヒアリムが、サルマン軍との戦いの傷を癒していました。アラゴルンは、パランティーアを通じてサウロンと対峙し、呪われた死者の軍勢を味方につけるため、死者の道へと向かいます。レゴラス、ギムリ、そしてエルロンドの息子たちが同行します。セオデン王はロヒアリムの騎馬軍団を率いてゴンドールへ向かいますが、メリーは従軍を拒否されます。しかし、デルンヘルムと名乗る騎士がメリーを馬に乗せ、戦場へと連れて行きます。セオデン王は森の民の助けを借り、オークの待ち伏せを避けながらミナス・ティリスへ急行します。

アングマールの魔王に率いられたモルドール軍はミナス・ティリスの門を破りますが、駆けつけたローハン軍によって圧倒されます。そこに現れた黒い船団にモルドール軍は歓喜しますが、船に王の旗が掲げられるのを見て愕然とします。アラゴルンが死者の軍勢を率いてウンバールの海賊を打ち破り、ゴンドールの民を救出したのです。ペレンノール野の合戦で、アングマールの魔王はエオウィンとメリーによって討たれます。包囲軍は退けられますが、セオデン王をはじめ多くの犠牲が出ます。デネソールはファラミアを生きながら火葬しようとしますが、ガンダルフとピピンによって阻止されます。デネソールは、パランティーアを覗き見たことで絶望に囚われたことを明かし、炎の中で自滅します。ファラミアはアラゴルンの治療を受け、回復に向かいます。

ガンダルフとアラゴルンは、フロドとサムが滅びの山へたどり着き、指輪を破壊できるよう、モルドール軍を陽動作戦で引きつけることを決意します。

第六巻：王の帰還

一つの指輪を手にしたサムは、キリス・ウンゴルの塔で拷問を受けていたフロドを救出します。フロドとサムはモルドールの荒野を進み、オークの軍勢を避けながら滅びの山を目指します。ガンダルフの陽動作戦は成功し、モルドールは手薄になります。フロドは滅びの罅裂にたどり着きますが、指輪の力に屈し、自分のものにしようとします。その時、ゴクリがフロドを襲い、指を噛みちぎって指輪を奪います。歓喜したゴクリはバランスを崩し、指輪とともに罅裂に落ちます。指輪はついに破壊され、中つ国はサウロンから解放されます。滅びの山は爆発し、フロドとサムは溶岩流に囲まれますが、大鷲によって救出されます。サウロンは滅び、その軍勢は敗走します。

ミナス・ティリスでは、ファラミアとエオウィンが療病院で出会い、恋に落ちます。アラゴルンはゴンドール王として戴冠し、アルウェンとの婚礼を挙げます。ホビットたちは故郷ホビット庄へ帰還しますが、そこは荒廃していました。メリー、ピピン、フロド、サムはホビットたちを率いて戦い、ホビット庄を解放します。フロドは傷の影響から回復せず、ガンダルフ、ビルボ、そしてエルフたちと共に西の浄土へ旅立ちます。

サムはフロドから全てを受け継ぎ、ロージーと結婚し、娘のエラノールに迎えられ、新たな人生を歩み始めます。

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