現実療法

現実療法（Reality Therapy, RT）は、ウィリアム・グラッサーによって1960年代に開発された心理療法のアプローチです。従来の精神医学や精神分析、その他の医療モデルに基づく心理療法とは一線を画しており、過去に起きた出来事や潜在意識を探るのではなく、現在の状況に焦点を当て、クライアントがより充実した人生を送るために、自ら責任を持って行動することを重視しています。

現実療法の中心となる考え方は、人間の行動は基本的に自分のニーズを満たすための選択の結果であるということです。幸福、愛、所属、力、自由といった基本的な人間の欲求を満たすために、人は様々な行動をとります。これらの欲求が満たされない時、人は不満や苦痛を感じ、問題行動を起こす可能性があります。現実療法では、これらの欲求と行動のつながりを明らかにし、クライアント自身がより効果的な行動を選択できるよう支援します。

治療過程では、まずセラピストとクライアントが協力関係を築き、クライアントの現在の状況や抱えている問題について話し合います。過去の経験については、必要に応じて触れることもありますが、あくまで現在の問題解決に役立つ範囲にとどまります。重要なのは、クライアントが自らの行動に責任を持ち、問題解決に向けて具体的な行動計画を立てることです。

現実療法では、クライアントに具体的な質問を投げかけることで、自己評価を促し、問題解決のための行動を促します。例えば、「今の状況をどう変えたいですか？」「そのためには、具体的にどのような行動をとりますか？」といった質問を通して、クライアント自身の考えや行動を明確化していきます。また、セラピストは、クライアントの行動計画をサポートし、目標達成に向けて励まし、フィードバックを提供します。

現実療法の特徴として、クライアントの自己決定権を尊重し、主体的な関与を促す点が挙げられます。セラピストは、クライアントを導く役割を果たしますが、一方的に指示を出すのではなく、クライアント自身の判断と選択を尊重します。クライアントが自ら責任を持って行動することで、自己効力感を高め、より充実した人生を送れるよう支援します。

さらに、現実療法は、様々な問題への適用が可能です。うつ病、不安障害、人間関係の問題、依存症など、幅広い問題を抱えるクライアントに対して有効なアプローチとなる可能性があります。ただし、重度の精神疾患や、緊急性の高い状況には、必ずしも適切な治療法とは限りません。

現実療法は、過去のトラウマや潜在意識に焦点を当てるのではなく、現在の状況を改善するための具体的な行動計画を立てることに重点を置いています。これは、自己責任と主体的な生き方を求める人々にとって、非常に有効なアプローチとなり得ます。ウィリアム・グラッサーの提唱したこの療法は、現在も世界中で実践され、多くの人々の生活の質の向上に貢献しています。より詳細な情報については、William Glasser のウェブサイトや、NPO日本リアリティセラピー協会のウェブサイトを参照することをお勧めします。

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