球体 (三浦大知のアルバム)

三浦大知『球体』：音楽と身体表現の極致

2018年7月11日にリリースされた三浦大知の7thアルバム『球体』は、単なる音楽作品にとどまらず、彼のヴォーカルとダンスパフォーマンスにおける可能性を深く追求したコンセプチュアルなプロジェクトです。プロデューサーNao'ymtとの約3年半にわたる協働により、緻密に構築されたサウンドと、三浦自身の身体表現が見事に融合した作品として、高い評価を受けています。

グローバルなサウンドと日本的な表現の融合

『球体』の音楽性は、アンビエントR&Bやチルアウト系のダンスミュージックといった、グローバルなトレンドと共鳴するサウンドを基盤としています。しかし、単なる模倣に終わらず、独自の解釈とアレンジが施されている点が特徴です。批評家のimdkmは、フランク・オーシャンのようなローファイなアンビエントR&Bと比較して、『球体』が一貫してハイファイでクリアな音像を維持している点を指摘しています。また、「円環」「テレパシー」「世界」といった楽曲に顕著な、80年代ポップスを彷彿とさせるPCM系のドラムマシンやシンセサイザーの音色は、懐かしさと新しさを同時に感じさせます。さらに、「飛行船」などの楽曲では、フューチャーベースをはじめとするEDM以降のダンスミュージックを取り入れ、サウンドの幅広さを見せています。

批評家からの評価

『球体』は、音楽業界のプロフェッショナルからも高い評価を受けています。蔦谷好位置は、テレビ朝日の音楽番組「関ジャム 完全燃SHOW」で、「飛行船」を2018年のベスト10曲の1位に選出し、「日本人の作るポピュラー音楽における芸術性を近年最も感じた曲」と絶賛しました。一方、「ミュージック・マガジン」の鈴木孝弥は、楽曲の美しさを評価しつつも、サウンドの過剰な刺激を指摘しています。しかし、同誌の「2010年代の邦楽アルバム・ベスト100」では27位に選出され、音楽評論家の原田和典は「鮮やかすぎる新機軸だ」と評しました。

日本語とJ-POPの再定義

imdkmは、著書「リズムから考えるJ-POP史」の中で、『球体』におけるグローバルなサウンドと日本語の歌詞との関係性に着目し、星野源や宇多田ヒカルの作品を参考に、「日本語によるポップ・ミュージック」と「日本のポップ・ミュージック」の同一性を前提としない、「J」なしの「POP」の可能性を探求しています。そして、三浦が海外で築きつつあるファンベースに期待を寄せながら、「J＝日本」をポストグローバリゼーションの時代において再定義する試みの必要性を論じています。

"完全独演"公演『球体』と映像配信

アルバムの発売に先駆け、三浦大知自身が演出、構成、振付を手がけた"完全独演"公演『球体』が全国7都市で開催されました。この公演では、三浦が一人で歌い踊り、アルバムの世界観を体現しました。また、アルバムの映像特典として収録された「球体」独演は、YouTube Premieresで世界同時配信され、多くの視聴者を魅了しました。

『球体』は、三浦大知の音楽性と身体表現が結実した、革新的な作品です。グローバルなサウンドを取り入れながらも、日本的な要素を融合させ、新たなポップミュージックの可能性を提示しています。彼の飽くなき探求心と、卓越した表現力によって生み出された『球体』は、聴く者を魅了し、新たな音楽体験へと誘います。

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