環境放射線

環境放射線とは

環境放射線とは、私たちの生活環境中に存在する放射線のことです。これには、自然界に元々存在する自然放射線と、人間の活動によって生み出された人工放射線があります。

環境放射線の分類

自然放射線

自然放射線は、宇宙線や地中の放射性物質など、自然界に由来する放射線です。

宇宙線: 宇宙空間から地球に降り注ぐ放射線で、地磁気の影響を受け、高緯度地域ほど強くなります。高度が高い場所では、空気密度が低いため宇宙線が多く、放射線量も高くなります（高度1500mごとに約2倍）。
大地からの放射線: 地殻に含まれる放射性物質（ウラン、トリウム、カリウム40など）から放出される放射線で、場所によって線量が異なります。これらの放射性物質は崩壊過程でラドンを生成し、空気中にも微量に含まれます。

自然放射線による被曝量は、世界平均で年間2.4mSvと推定されていますが、地域によって大きく異なり、1mSvから数十mSvに達する場所もあります。ブラジルのグァラパリやイランのラムサールなど、特に放射線量の高い地域（ホットスポット）も存在します。日本では、神奈川県で0.81mSv、岐阜県で1.19mSvと地域差があります（大気中のラドンからの被曝量を含まず）。木造建築では、ラドンからの年間被曝量は約0.4mSvと推定されています。

人工放射線

人工放射線は、核実験、原子力発電所の事故、医療活動など、人間の活動によって放出される放射線です。

核実験: 過去の核実験（特に大気圏内核実験）により、大量の放射性物質が放出され、環境を汚染しました。1963年には年間0.15mSvの増加がありましたが、核実験の自粛により、2000年には0.005mSvまで減少したと考えられています。
原子力発電所: 平常運転時にも微量の放射性物質を排出していますが、事故時には大量の放射性物質が拡散する可能性があります。チェルノブイリ原子力発電所事故や福島第一原子力発電所事故は、環境放射能に大きな影響を与えました。
* 医療: X線撮影やCTスキャンなどの医療行為も、人工放射線の原因となります。医療被曝は、国によっては自然被曝を超えるケースもあり、リスクが懸念されています。

人工放射線による世界平均の被曝量は年間0.11mSv、日本では0.012mSvと推定されています。

環境放射線モニタリング

環境放射線モニタリングは、生活環境が放射線によってどれだけ汚染されているかを把握し、人体への影響を評価するために行われます。原子力施設周辺では、施設から放出される放射性物質による影響を監視するために、環境放射線の測定が継続的に行われています。

モニタリングでは、主にガンマ線が測定され、ガイガー＝ミュラー計数管やシンチレーション検出器などが用いられます。また、河川水、土壌、農産物などのサンプルから放射能を測定し、核種を特定・分析します。

まとめ

環境放射線は、自然界と人間の活動の両方に由来します。放射線量を把握し、適切な対策を行うことで、放射線によるリスクを最小限に抑えることができます。環境放射線モニタリングは、そのために重要な役割を果たしています。

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