環境社会学

環境社会学について

環境社会学（かんきょうしゃかいがく）とは、人間社会と自然環境の相互作用を探求する社会学の一分野であり、特にその社会的側面に焦点を当てて研究が行われています。この学問分野は、様々な環境問題を社会学的視点から分析し、実証的かつ理論的アプローチを用いて理解を深めようとしています。

環境社会学の歴史

日本における先駆的研究

日本では、1970年代末にアメリカで環境社会学が提唱される前から、環境問題に関連する研究が行われていました。特に、島崎稔らによって検討された鉱毒問題に関する調査が重要な起点となっています。彼らは、地域社会の変化や労働環境における生活破壊についての分析を行い、実証的な成果を上げていました。この時期から、日本の地域社会学や農村社会学の研究者たちは、環境問題を社会学的に探求する足場を築いていきました。

アメリカにおける環境社会学の確立

1970年代末、アメリカの農村社会学者ライリー・ダンラップが「環境社会学」を制度的な学問分野として提唱しました。従来の社会学が持つ人間中心主義的な見解と自然環境との間の二分法を批判し、人間を生物種の一員として位置づけた上で、新たな社会学的アプローチが必要であると強調しました。これにより、環境社会学は、自然と社会を分けるのではなく、その相互作用を重視する新しい視点をもたらしました。

日本での制度化

日本においても、アメリカの提唱を受けて1980年代末から環境社会学の制度化が進みました。若手研究者や中堅研究者が中心となり、1990年には環境社会学研究会が設立され、その後1992年には環境社会学会に組織が改編されました。このような歴史を経て、環境社会学は日本においても確固たる学問領域として位置づけられるようになりました。

環境社会学の特徴

環境社会学は、他の社会学分野にはあまり見られない政策科学志向を持っています。これは、環境社会学者が実社会の環境問題に積極的にアプローチし、政策の形成や実践に関与しようとする姿勢の現れです。

環境社会学の理論と方法

環境社会学では、様々な理論が提案されてきました。代表的な理論としては以下のものがあります。

被害（-加害）構造論

この理論は、飯島伸子による水俣病に関する調査や公害に関する社会史の研究を基に形成されました。加害者と被害者の関係を探ることで、環境問題における構造的側面を理解しようとしてきました。

受益圏・受苦圏論

舩橋晴俊や長谷川公一などによる新幹線公害研究を通じて形成されたこの理論は、特定の環境問題への関与が、どのようにして社会的な受益と苦痛を生むかを考察します。

社会的ジレンマ論

同じく舩橋らによる研究から発展したこの理論は、環境問題が引き起こす社会的なジレンマについて分析し、個人や社会が直面する選択の難しさを明らかにします。

生活環境主義

1970年代末からの琵琶湖に関する研究によって形成されたこの理論は、地域住民の生活を重視し、自然と人間社会との調和を目指すものです。当時の環境政策が二分されている中で、現場の生の声を反映した考えが導入され、生活環境を重視する姿勢が強調されました。

まとめ

環境社会学は、自然環境と人間社会の関係を深く理解するための重要な学問分野であり、その発展は日本とアメリカの双方での研究活動によって支えられています。今後も、環境問題への実践的なアプローチが求められる中で、政策科学としての役割がますます重要になると言えるでしょう。

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