甘露寺受長

甘露寺受長：華族としての生涯と皇室への貢献

甘露寺受長伯爵（1880-1977）は、明治から昭和にかけて、宮廷と神社界で重要な役割を果たした人物です。甘露寺家35代当主として、華族社会の中枢に身を置きながら、皇室に仕え、明治神宮宮司として神道界にも大きな影響を与えました。その生涯は、激動の時代を生き抜いた一貴族の物語として、そして日本の近代史を彩る重要な証言として、後世に語り継がれるべきものです。

華族としての誕生と教育

1880年、甘露寺義長の長男として誕生した受長は、子爵勘解由小路資生の四女を母に持ち、恵まれた環境の中で育ちました。学習院を経て東京帝国大学法科を卒業、法学博士の学位を取得するなど、高い教養を身につけました。幼少期から皇太子嘉仁親王（後の大正天皇）の御学友として宮中に出仕するなど、皇室との繋がりは生涯にわたって深く続きます。

宮中奉仕と皇室への献身

明治43年（1910年）、受長は東宮侍従に任命され、大正天皇、そして昭和天皇に仕えました。昭和天皇の即位後は侍従、さらに侍従次長として、宮廷の中枢で重要な役割を果たします。昭和21年（1946年）には掌典長に就任し、皇室の祭祀にも携わりました。特に昭和34年（1959年）、皇太子明仁親王（後の上皇）と正田美智子妃殿下（後の上皇后）の結婚の儀では、重要な役割を担い、その儀式の円滑な進行に貢献しました。受長は、宮中祭祀について、婚約前の美智子妃に講義を行うなど、皇室の伝統継承にも尽力しました。

明治神宮宮司としての功績

昭和34年（1959年）、宮内庁を退官した受長は、同日に明治神宮宮司に就任しました。神社本庁顧問も兼任し、神道界においても指導的な立場として活躍します。高齢となるまで宮司職を務め上げ、昭和47年（1972年）には名誉宮司に就任しました。明治神宮宮司としての在任期間中は、神宮の維持発展に尽力し、その功績は高く評価されています。また、勅祭社宮司会の拝謁の機会を創設するなど、神社界の活性化にも貢献しました。

幅広い交友関係と社会貢献

受長は、大塚製靴との深い関係を持ち、同社の記念式典に度々出席し祝辞を述べています。また、華族出身という立場を生かし、政財界など幅広い分野の人々と交流を持ちました。その交友関係は、彼の人生や活動に大きな影響を与えたと言えるでしょう。

家族と親族

受長は満子女王（北白川宮能久親王の第一王女）と結婚し、2人の娘と2人の息子をもうけました。その家族や親族は、皇室や政財界、そして文化界など、各界の著名な人物と複雑に絡み合っています。例えば、娘婿には日本銀行総裁を務めた人物もおり、その親族関係は、日本の近代史における家系のつながりを示す一例となっています。また、母方の従弟には作家の武者小路実篤もいます。

受長の著作

受長は、『背広の天皇』や『天皇さま』など、皇室に関する著作を遺しています。これらの著作は、現代においても貴重な史料として、当時の皇室や社会情勢を知る上で重要な役割を果たしています。

まとめ

甘露寺受長は、華族としての地位、宮廷での奉仕、そして明治神宮宮司としての役割を通して、明治から昭和にかけての日本社会に大きな影響を与えました。皇室との深い繋がり、幅広い人脈、そして深い教養は、彼の生涯を彩る重要な要素です。彼の功績と人生は、日本の近代史を理解する上で不可欠な要素であり、今後も研究が続けられるべきでしょう。

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