生存 LifE

生存 LifE

福本伸行が原作を手がけ、かわぐちかいじが作画を担当した日本の漫画作品です。1999年に講談社の雑誌『ヤングマガジンアッパーズ』で連載されました。福本伸行は『賭博黙示録カイジ』などの代表作で知られ、かわぐちかいじとは過去に『告白 CONFESSION』でも共同制作を行っています。本作は、タイムリミットが迫る中で繰り広げられる、父の娘への深い愛情と、犯人への執念を描いたサスペンスドラマです。

概要

物語の中心となるのは、余命わずかと宣告された父親が、長年行方不明だった娘の殺害犯を捜し出すという重厚なテーマです。1999年を舞台としているため、当時の殺人罪の公訴時効である15年という期間が、物語に緊迫感を与えています。また、容疑者の海外渡航が公訴時効の停止に影響を与える可能性など、刑事訴訟法における時効に関する規定にも触れられており、法的な側面がストーリーの重要な要素となっています。

あらすじ

プロローグ

1999年4月、大手企業に勤務する武田信太郎は、かつて妻を奪ったのと同じ肝臓がんを患い、医師から余命半年の宣告を受けます。絶望から一度は自らの命を絶とうと考えますが、まさにその時、14年前に失踪した娘・佐和子の遺体が長野県で発見されたとの連絡が警察から入ります。佐和子に対する殺人罪の公訴時効が「あと半年」であると知った武田は、自身の残された時間と奇しくも一致することに運命を感じ、娘を殺した犯人を必ず見つけ出すことを固く決意します。会社を辞めた武田は、長野県警N市中央署の刑事である村井の協力を得ながらも、基本的には単独で捜査を開始します。

捜査の進展

16年前の佐和子の足取りを追う中で、彼女が美術館で開催されていた「海野たつき展」を訪れていたことや、かつて家族で旅行した「思い出の場所」に行っていたことが明らかになります。その思い出の場所に埋められていたタイムカプセルを掘り起こすと、16歳の佐和子が描いた一枚の絵が見つかります。その絵には「青い車」が描かれており、まるで娘を覗き見ていたような、不気味な場所からの視点が感じられます。

当時のたつき展の来訪者から写真を見せてもらうと、青いセダンに乗った男と佐和子が一緒だったことが判明します。しかし、これらの証拠を提示しても、警察は真剣に取り合おうとしません。そんな中、ただ一人、村井刑事だけは武田に協力的で、連日独自に捜査を進め、武田の家に電話で報告を続けます。やがて、佐和子が「海外ボランティア」に強い関心を寄せていたこと、そしてボランティア運営スタッフに対し「父の迎えが来てますので」と告げて立ち去っていたことがわかります。

容疑者の浮上と混乱

公訴時効が過ぎた後も、犯人が海外渡航によって時効が停止している可能性を考え、武田と村井は捜査を継続します。その過程で、佐和子の知人に「青いセダン」を所有していた佐藤裕太という男がいたことが判明します。スクラップ置場に積まれた車の山の中から、佐藤が所有していた青いカマロが発見され、そのトランクルームには「佐和子が残した」と思しき遺書が書き残されていました。遺書には「佐藤、1063636、1055915、たすけて父さん佐和子」と記されており、1年間の海外渡航歴がある佐藤は時効が成立していないため、彼への疑いが強まります。しかし、佐藤には事件当日の明確なアリバイがありました。佐藤の話によれば、青いカマロは当時何人かの知人に貸しており、そのうちの一人が「さとちゃん」というニックネームで呼ばれていた人物だったといいます。娘はこれを「佐藤」と誤認していた可能性が浮上します。

真犯人への接近、そして決着

捜査線上には、かつて武田の部下であった中村さとしの名前が浮かび上がります。武田は中村こそが真犯人であると確信します。武田と村井の追及に対し、公訴時効が過ぎたと主張する中村は、ついに自らが犯人であることを認めます。村井刑事は、事件直後に武田家に届いた佐和子からのハガキの消印から、娘が消印の日まで生きていて自分で投函したと主張し、公訴時効はまだ成立していないと訴えます。これに対し中村は、ハガキは自分が捜査を攪乱するために死体遺棄後に投函したものであり、自身のパスポートの海外渡航履歴から消印の日には犯行が不可能だと反論します。武田は、娘が遺書に残した「1063636、1055915」という謎の数字が、事件当日の「株式相場の平均株価」であることを突き止めます。この数字が記録された日付から、佐和子が殺害されたと思われた日よりも2日長く生存していたことを証明し、公訴時効がまだ成立していないことを明らかにするのです。これにより、中村は警察に逮捕されます。

エピローグ

余命半年と宣告されていた武田でしたが、奇跡的にがんの進行がほとんど止まっていることが判明します。事件解決後、武田は娘・佐和子の海外ボランティアへの夢を受け継ぎ、新たな人生に向けて旅立ちます。

主な登場人物

武田信太郎: 東和建設の幹部。仕事一筋で家庭を顧みなかった過去を持つ。肝臓がんによる余命宣告を受け、娘の遺体発見を機に犯人捜しに人生の全てをかける。
村井: 長野県警N市中央署の刑事。過去の未解決事件の経験から、武田の犯人捜しに真摯に協力する。
武田佐和子: 武田の娘。高校への不登校を経て失踪。16歳で命を落とし、長年の時を経て遺体で発見される。
中村さとし: 東和建設の社員で、武田の元部下。事件の真相に関わる人物。

書誌情報

アッパーズKC（講談社）: 全3巻
第1巻: 2000年7月9日発売
第2巻: 2000年8月9日発売
第3巻: 2000年9月8日発売
講談社漫画文庫（講談社）: 全1巻
2007年12月21日発売
KCデラックス 新装版（講談社）: 全2巻
第1巻・第2巻: 2012年5月7日同時発売

テレビドラマ

2002年2月11日から3月4日にかけて、NHK総合テレビの「月曜ドラマシリーズ」枠で、『生存 愛する娘のために』のタイトルでテレビドラマ化されました。全4回。この作品は、女優の上野樹里にとってテレビドラマ初出演作となりました。

主なキャスト:

武田正生: 北大路欣也
村井飛鳥: 富田靖子
武田佐和子: 上野樹里
武田直美: 土田早苗
中村: 別所哲也
ほか

原作からの主な変更点:

原作の中年男性刑事であった村井が、ドラマでは30代前半の女性刑事「村井飛鳥」に変更されています。

関連事項

未解決事件
公訴時効

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