生物海洋学

生物海洋学とは

生物海洋学は、海洋における生物過程に焦点を当て、海のあり方を解明しようとする学問分野です。海洋生物学が個々の生物の生理や生態を研究するのに対し、生物海洋学はより広い視点から、生物が海洋環境全体にどのように影響を与えているかを考察します。また、水産海洋学は、水産資源としての海洋生物に重点を置く分野です。

研究対象

生物海洋学の主な研究対象は、以下の通りです。

植物プランクトン: 海洋の基礎生産者であり、光合成によって有機物を生成します。
動物プランクトン: 植物プランクトンを捕食し、より高次の生物へのエネルギーの流れを担います。
従属栄養性細菌（バクテリア）: 有機物を分解し、物質循環において重要な役割を果たします。

魚類やクジラ類などの大型動物も海洋生態系において重要ですが、個体数、種数、物質循環への寄与の面で微生物が圧倒的な存在感を示しています。

海洋環境問題への関与

生物海洋学は、富栄養化、デッドゾーン（酸素不足）、HNLC海域（鉄分不足で植物プランクトンが生成されにくい海域）、海洋施肥など、現代の海洋環境問題の理解と解決にも不可欠な知識を提供します。

富栄養化: 窒素やリンなどの栄養塩が過剰に供給されることで、藻類が異常に繁殖し、生態系に悪影響を及ぼします。
デッドゾーン: 藻類の大量発生と分解によって酸素が消費され、海洋生物が生息できない低酸素状態となります。
HNLC海域: 鉄分が不足しているため、植物プランクトンの成長が制限され、生物生産性が低い海域です。
海洋施肥: 鉄などの栄養塩を人為的に供給することで、植物プランクトンの成長を促進し、二酸化炭素を吸収させようとする試みです。

海洋の渦

コールドコアリング（冷水渦）やウォームコアリング（暖水渦）といった海洋の渦も、生物分布に影響を与えます。

コールドコアリング: 周囲よりも水温が低い冷水塊で、栄養豊富な深層水が湧昇しやすく、生物生産性が高い場合があります。
* ウォームコアリング: 周囲よりも水温が高い暖水塊で、生物分布に影響を与えます。


生物海洋学は、海洋生態系を理解し、持続可能な海洋環境を維持するために不可欠な学問です。

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