田上一秀

プロ野球選手 田上 一秀の軌跡

宮崎県に生まれた田上一秀（たのうえ かずひで）は、1947年7月23日にこの世に生を受け、後にプロ野球の世界へとその才能を試すこととなります。

彼の野球人生における最初の大きな舞台は、都城農業高校時代でした。この時期、彼はチームのエースであった坂元健投手の控えとしてマウンドに上がることが多かったものの、その非凡な打撃センスは周囲の目を惹きつけました。マウンドを降りれば一塁手としてチームの中軸、すなわち三番打者を任されるなど、投打にわたる活躍でチームを牽引しました。

高校時代における彼の名を一躍有名にしたのは、1965年夏の全国高等学校野球選手権大会宮崎県予選における活躍です。特に一回戦で対戦した妻高校との試合は、野球史に残る激闘となりました。この試合は規定により延長18回を戦い抜きながらも決着がつかず引き分けとなり、後日再試合が行われました。この二試合を通じて、田上選手は打者として計10打数で7安打を記録するという驚異的なバッティングを披露し、そのポテンシャルの高さを示すこととなりました。この活躍は多くのプロ球団のスカウトの注目するところとなり、彼の将来に大きな可能性を感じさせた出来事でした。

高校卒業後の進路については、複数の選択肢がありました。読売ジャイアンツや近鉄バファローズといった名門プロ球団が彼の才能を高く評価し、獲得に乗り出す動きを見せていたのです。しかし、当時、田上選手の意向は社会人野球へと傾いており、強豪として知られる電電関東への入社が既に内定していました。この内定があったため、彼はその年のプロ野球ドラフト会議において、プロ野球志望届を提出しませんでした。結果として、ドラフトリストに彼の名前が載ることはありませんでした。

ところが、運命は予測不能な展開を見せます。ドラフト会議を終えた後、異例の形でプロ入りの道が開かれたのです。1965年のドラフト外選手として、パシフィック・リーグに所属する南海ホークスへの入団が決まりました。社会人野球への内定から一転、プロ野球選手としてのキャリアをスタートさせることとなったのです。

プロの世界に足を踏み入れた田上選手は、投手として登録されました。投球スタイルは、オーバースローから投げ下ろす本格派タイプであり、その恵まれた体格、特に長身は、往年の大投手である金田正一氏を彷彿とさせるスケール感を持っていました。球団側も、そのポテンシャルに大きな期待を寄せていたことでしょう。

しかし、プロの厳しい世界で彼が直面した最大の課題は、制球力でした。アマチュア時代には目立たなかったコントロールの不安定さが、プロレベルの打者相手には致命的な弱点となりました。この制球難を克服するための努力が続きましたが、残念ながら彼のプロ在籍期間中に、その課題をクリアし、首脳陣の信頼を得るまでには至りませんでした。結果として、プロ野球選手として南海ホークスに在籍した期間（1966年から1967年まで、背番号は48）において、一度も一軍の公式戦のマウンドに立つ機会を得ることはありませんでした。

プロの世界での短い挑戦を終えた田上選手は、その後ホークスを退団しました。高校時代に投打にわたる才能で注目を集め、特に打者としての伝説的な活躍でプロ球団の関心を引きながらも、投手として挑んだプロの舞台では一軍登板を果たせずにキャリアを終えた彼の軌跡は、プロ野球選手の道のりの厳しさを物語っています。彼の名前は、宮崎県出身のプロ野球選手、そして福岡ソフトバンクホークスの前身である南海ホークスに在籍した選手の一人として、記録に残されています。

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