田中伸明

田中伸明：和紙写真の先駆者、写真データ最適化の先進技術Photo Authoringの開発者

1956年北海道小樽市生まれの写真家、田中伸明氏は、日本和紙写真協会会長、国際博物館会議正会員、ICFA美術の博物館・コレクション国際委員会メンバーとして活躍する第一人者です。

幅広い活動

田中氏は、写真集や記録集、アートブックなどの企画制作に携わる傍ら、画家や造形作家など、多様なアーティストの作品集制作も数多く手がけてきました。2010年頃からは写真講師としても活動を開始し、プロアマ問わず全国の写真家を育成、2015年からはARTROOM出版名義で写真に関する著書を出版しています。

日本和紙写真協会設立への軌跡

転機となったのは、国際博物館会議京都国際大会への出展でした。田中写真事務所は、田中氏個人の作品だけでなく、写真講座の受講生の作品も展示しました。その中で、特に和紙写真作品がロシアのオレンブルク市美術館から高い評価を受け、日本人作家による和紙写真展の開催を打診されたのです。このことがきっかけとなり、徳島県の阿波和紙伝統産業会館（アワガミファクトリー）の協力を得て、日本和紙写真協会を設立しました。この協会は、国内外の美術館での和紙写真の展示と写真家の作家支援を目的として活動しています。2021年には、ロシア各地を巡回する「Japan Washigraph Exhibition」がスタート、和紙写真の国際的な認知度向上に大きく貢献しています。

主要展覧会

田中氏の作品は、数々の展覧会で発表されています。主な展覧会としては、以下のものがあります。

2014年 fotofever（パリ、ルーヴル地下展示施設）
2019年 第25回ICOM（国際博物館会議）京都大会
2021年 ロシア連邦巡回展「Japan Washigraph Exhibition」（オレンブルク州立オレンブルク美術館ギャラリー、オレンブルク州ノヴォトロイツク市美術館、ウリヤノフスク州立イワン・ゴンチャロフ記念博物館、バシコルトスタン共和国国立博物館（コロナ禍により延期））

写真データ最適化プロセス「Photo Authoring」

田中氏はAnsel Adamsのゾーンシステムと音楽スタジオでのマスタリング作業に着想を得て、「Photo Authoring」という独自の 写真データ最適化プロセスを開発しました。これは、単なるRAW現像やレタッチではなく、撮影時のカメラ設定から最終仕上げまでを網羅した、データの一貫した最適化手法です。 「写真をいかに組み立てるか」という視点に基づき、写真家のみならず、印刷製版技術者の間でも注目を集めています。このPhoto Authoringの理念は、完成度の高い和紙写真作品「Washigraph Photo」の誕生にも大きく貢献しています。

書籍制作

田中氏は、写真集や記録集の制作にも多数携わっており、その代表作には以下のものがあります。

主な大型書籍

『吉田千秋写真集 歌舞伎座―歌舞伎四百年記念』（朝日新聞社、2003年）
開場40周年記念国立劇場歌舞伎公演記録集シリーズ（10タイトル、ぴあ、2005年）
『アントニオ猪木全記録―デビュー50周年記念公式写真集』（たちばな出版、2010年）
『日本プロレス全史―１８５４年‐２０１３年の闘いの記録』（ベースボール・マガジン社、2014年）

著書

『いつか役に立つ写真講座＃1.0』（ARTROOM出版、2015年）
『いつか役に立つ写真講座 #2.0』（ARTROOM出版、2016年）
『いつか役に立つ写真講座＃3.0　人モノ撮影は写真上達の突破口』（ARTROOM出版、2017年）
* 『Photo Authoring Handbook vol.１』（ARTROOM出版、2016年）

田中伸明氏の活動は、和紙写真の可能性を広げ、写真データの新たな処理方法を確立するなど、写真界に多大な影響を与え続けています。今後の活躍にも期待が高まります。

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