田中四郎

田中四郎

田中四郎（たなか しろう、1901年 - 1945年8月15日）は、日本の実業家であり、歌人・俳人としても名を残しました。青野梓（あおの あずさ）のペンネームでも知られています。

生涯

和歌山県出身の田中は、和歌山商業学校時代に全国少年相撲大会で優勝。その実力が認められ、1918年、神戸高等商業学校（現在の神戸大学）に入学すると、相撲部で活躍しました。1919年には、第1回全国学生相撲大会で初代学生横綱に輝きましたが、翌年の第2回大会では早稲田大学の選手に敗れています。

1922年に神戸高商を卒業後、鈴木商店に入社。麦粉部に配属され、アメリカやカナダからの麦粉輸入に携わりました。神戸高商在学中から鈴木商店の幹部候補として期待され、将来を嘱望されていましたが、1927年に鈴木商店が倒産。金子直吉との関係が深かった田中は、神戸高商閥から遠ざけられることとなりました。

実業界に失望した田中は、京都帝国大学の選科で国文学を学び、短歌に傾倒。同級生であった五味保義と親交を深めます。1929年からは3年間、山陽電気軌道（鈴木商店の関連会社）で運輸課長を務め、長府楽園地の開設に尽力しました。その後、栗本鐵工所に移り、取締役・支配人にまで昇進しています。

1940年、出版統制機関である日本出版文化協会（文協）が発足すると、飯島幡司との関係から重役として迎えられました。文協では、出版物の統制や「良書」の推薦、用紙の配分などを行いましたが、内部対立が深刻化。田中は飯島とともに実業界出身者グループを率い、社会学者出身者グループと対立しました。さらに、両者を批判するグループも現れ、文協は混乱を極めます。飯島が辞職すると、田中も1943年に文協を去りました。

その後、金子直吉が率いる太陽産業（現在の太陽鉱工）の役員を務めましたが、第二次世界大戦末期に召集を受け、陸軍少尉として北部朝鮮へ。1945年8月15日、咸鏡北道清津府でソ連軍との戦闘で戦死しました。

文学者として

文学においては、土屋文明に師事してアララギ派の歌人となりました。夫人の母が俳人であった影響で、俳句も嗜みました。「青野梓」のペンネームで多くの作品を発表し、歌集『青野』を刊行しています。

人物

教職を務めた経験もあるといいます。松岡ひでたかによる研究書『田中四郎ノオト』や、追悼文集『田中四郎氏を偲ぶ : 出版文協時代とその前後』が出版されています。

戦死の状況は追悼文集に詳しく、退却を指揮中に銃弾に倒れたと伝えられています。息を引き取った場所は、清津商業学校の校庭にあった相撲場の土俵の上であったといいます。

参考文献

植村和秀「書評誌『読書人』の国内思想戦 : 1940年代前半日本の言論空間研究(1)」『産大法学』第55巻、第1号、京都産業大学法学会、2021a。
植村和秀「書評誌『読書人』の国内思想戦 : 1940年代前半日本の言論空間研究(2)」『産大法学』第55巻、第2号、京都産業大学法学会、2021b。

外部リンク

* 鈴木商店こぼれ話シリーズ⑮「初の学生横綱は、神戸高商出身の田中四郎」をご紹介します - 鈴木商店記念館

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