田代順孝

田代順孝（たしろよりたか）氏は、1945年に生まれ、日本の緑地造園学分野で多大な貢献をしてきた学者です。特に、国際ランドスケープマネージメントや、都市におけるレクリエーション領域を専門として研究・活動を行い、千葉大学名誉教授およびグランドフェローの称号を得ています。工学博士の学位を持ち、その研究は学術的な深さと実社会への応用性を兼ね備えています。

田代氏の学問への道は、埼玉県立熊谷高等学校を卒業後、社会人経験を経てから始まりました。1967年に千葉大学園芸学部造園学科に入学し、1971年に卒業。その後、同大学大学院園芸学研究科修士課程（造園学専攻）に進み、1973年に修了しました。さらに学びを深めるため、1979年には東京大学大学院工学系研究科博士課程（都市工学専攻）を修了しています。大学院修了後は、建設省土木研究所などで研鑽を積み、後に母校である千葉大学へ赴任。1995年からは千葉大学園芸学部の教授として、後進の指導と研究の推進にあたりました。

教育・研究活動と並行して、国内外の多岐にわたる組織で要職を歴任しました。国際的な活動としては、「住みよい街づくり国際コンクール」の常任審査委員および理事を務め、世界の都市環境改善に貢献。また、International Federation of Park and Recreation Administration (IFPRA) 国際公園レクリエーション管理行政連合の日本代表理事、World Urban Parksの初代理事など、公園や緑地の管理・行政に関する国際的な連携強化に尽力しました。International Awards for Liveable Communitiesの理事や国際審査委員としても活動し、国際的な視点から持続可能なコミュニティづくりを推進しました。

国内においても、その専門知識と経験は広く求められました。千葉県景観等影響評価専門委員、公益財団法人東京都公園協会評議員、防災公園計画設計・管理運営ガイドライン改訂検討委員会委員、東京都都市復興基本計画検討委員会委員など、多数の委員会で重要な役割を果たし、日本の景観保全、都市緑化、公園整備、災害からの復興計画などに貢献しました。また、造園学の分野を牽引する存在として、1975年からIFLA（国際ランドスケープアーキテクト連盟）の幹事を務め、2004年からは国際委員会会長を務めるなど、学術交流の促進にも努めました。2011年に千葉大学を退職した後も、名誉教授としてその知見は高く評価されています。

長年の研究と実務に対する功績は、数々の受賞によって称えられています。1980年には日本造園学会賞（論文部門）を受賞し、学術研究の成果が評価されました。1992年には日本造園修景協会下山奨励賞、2011年には日本公園緑地協会北村賞を受賞するなど、実務面や業界への貢献も高く評価されています。そして、2016年には日本造園学会賞上原敬二賞を受賞し、日本の造園学全体の発展への貢献が認められました。

田代氏の研究成果は多くの著作にまとめられており、単著としては、緑域計画の考え方を示す『緑のパッチワーク―緑域計画のための「9+1」章』や、都市農地の計画論に関する基礎研究をまとめた『都市農地論』などがあります。共著としても、『パークマネジメント 地域で活かされる公園づくり』、『市民ランドスケープの展開』、『市民ランドスケープの創造』、『明日の都市づくり その実践的ビジョン』など、幅広いテーマに関する書籍を執筆しており、都市環境、公園管理、市民参加型まちづくりなど、多岐にわたる関心領域とその知見を示しています。

田代順孝氏は、教育者、研究者、そして実務家として、日本の緑地造園学、国際的なランドスケープマネージメント、そして住みよい都市環境の実現に向けて、その生涯にわたり多大な貢献を果たしました。

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