田原桂一

田原桂一：日本の写真と光の魔術師

田原 桂一（たはら けいいち、1951年8月20日 - 2017年6月6日）は、日本が誇る写真家であり、特に光の使い方に独自の視点を持ち、その作品は国際的にも高く評価されています。彼は京都府で生まれ、若い頃から祖父の影響で写真に興味を持ち始めました。中学生の頃には既に写真技術を習得し、高校卒業後には劇団に参加し、照明や映像の担当として経験を積むことになります。

1972年、田原は劇団のヨーロッパ公演に同行し、フランス・パリに渡ります。そこで彼は日本の柔らかい光とは異なる、ヨーロッパの強烈な光に衝撃を受け、写真家としての道を歩むことを決めました。彼の初期作品である『都市』（1973年 - 1976年）では、モノクロームの写真を通してパリの街の特有の光を捉え、続くシリーズ『窓』（1973年 - 1980年）ではアルル国際写真フェスティバルで新人大賞を受賞し、彼の名声は一気に高まりました。

田原の作品は写真にとどまらず、光そのものをテーマにした大胆で独創的な作品を数多く残しています。彼は、「光そのものの存在を見たい」という欲求から、光を用いた彫刻やインスタレーションなど、多様な表現方法で光を探索しました。1989年に制作した『光の庭』は、サッポロビール恵庭工場の庭に設置された光の彫刻で、光と音楽がコンピュータ制御でシンクロし、観る者に特別な体験を提供します。

さらに、2000年にはサンマルタン運河の地下道内に『Echos de lumière』という永続的な作品を設け、プリズムを用いて虹の光を放ち、音の響きと共に地下道を彩りました。また、彼の作品『庭園Niwa』はパリ写真美術館の屋外スペースに設置され、2003年のヨーロッパ文化首都イベント『リール2004』では『Portail de lumière』が制作されました。田原はこれらの活動を通じて、光を用いたアートの新たな地平を切り開いていきました。

彼の写真展も国際的に多く開催され、2004年には東京都庭園美術館にて回顧展が行われ、光をテーマにしたインスタレーション作品も展示されました。田原が手がけた『光の門』は青山通りに設置され、訪れる人々に驚きと感動を与え続けています。2006年以降は建築デザインにも取り組み、パリ第七大学新校舎の外壁デザインやマルセイユの図書館のプロジェクトを通じて、光の表現の領域を拡大していきます。

また、田原は2009年に株式会社KTPを設立し、建築分野にも進出しました。2010年には新しい価値を加えたモジュールハウスシステム『CUBE CUBE』を開発し、彼のクリエイティブなビジョンを形にしました。日本国内だけでなく、世界を舞台に活動し、写真、映像、ブランディング、建築の各分野で成功を収めていった田原は、2017年に肺がんのため65歳で亡くなりました。

田原桂一は、常に光を追求し続け、彼の作品を通じて多くの人々にインスピレーションを与えました。彼の業績は後世にわたって記憶され、今もなお影響を与えています。

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