田口哲 (映画監督)

田口哲（たぐち さとし）は、1903年10月2日に岩手県で生まれ、1984年1月13日にその生涯を閉じた日本の映画監督、脚本家です。彼のキャリアは、昭和初期から戦後にかけての激動の時代と重なり、その作品群は、当時の社会情勢や人々の生活、心情を映し出す鏡とも言えるでしょう。

田口監督は、1932年の『恋人満開』で監督デビューを飾って以来、数多くの作品を手がけました。初期の作品には、『二人の新学士』(1933)や『母よ子よ』(1933)のように、当時の若者たちの恋愛や生活を描いたものが多く見られます。しかし、時代が戦争へと向かうにつれて、彼の作品も変化を見せます。『銃後に咲く』(1934)や『護国の母』(1936)など、戦意高揚を目的とした国策映画も手がけるようになります。これらの作品は、当時の社会背景を色濃く反映しており、映画がプロパガンダとして利用された時代の一側面を示すものと言えるでしょう。

戦後、田口監督は社会派ドラマや娯楽作品に軸足を移します。1946年の『修道院の花嫁』や『二死満塁』、1948年の『オリオン星座』や『夜のプラットフォーム』などがその代表例です。これらの作品では、戦後の混乱期における人々の苦悩や希望が描かれています。また、『情熱の人魚』(1948)のような、娯楽性の高い作品も手がけ、幅広いジャンルで才能を発揮しました。

田口監督は、監督業だけでなく、脚本家としても活躍しました。彼の脚本作品には、『娘三十人』(1937)や『鉄火部隊』(1938)などがあります。また、自ら原作を手がけた作品もあり、その多才ぶりが伺えます。特に、『海よ俺らの歌に泣け』(1961)は、監督と脚本の両方を担当した作品であり、彼の集大成とも言えるでしょう。

田口哲の作品群は、日本の映画史において重要な位置を占めています。彼の作品は、単なる娯楽作品としてだけでなく、当時の社会や人々の心情を理解するための貴重な資料としても価値があります。彼の作品を通して、私たちは昭和という時代をより深く理解することができるでしょう。

主な監督作品

恋人満開（1932）
二人の新学士（1933）
母よ子よ（1933）
銃後に咲く（1934）
接吻市場（1934）
芸者三代記＜大正篇＞（1934）
愚連隊の唄（1934）
抱かれた恋人（1934）
新妻と居候（1935）
心の花束（1935）
ためらふ勿れ若人よ（1935）
魂を投げろ（1935）
第二の母（1936）
護国の母（1936）
非常線（1936）
翼の世界（1937）
娘三十人（1937）
姉ごころ（1938）
男の道（1938）
鉄火部隊（1938）
大陸行進曲（1938）
礼子の出発（1939）
日の丸音頭（1939）
婦人従軍歌（1939）
風と共に（1939）
若き感情（1939）
女は泣かず（1940）
山のロマンス娘（1940）
明暗二街道（1941）
将軍と参謀と兵（1942）
修道院の花嫁（1946）
二死満塁（1946）
オリオン星座（1948）
夜のプラットフォーム（1948）
情熱の人魚（1948）
森林泥棒（1952）
恐怖のカービン銃（1954）
鉄血の魂（1956）
荒海の王者（1957）
女王蜂（1958）
人魚昇天（1958）
二十六人の逃亡者（1959）
海よ俺らの歌に泣け（1961）

主な脚本作品

娘三十人（1937）
鉄火部隊（1938）
大陸行進曲（1938）
華やかなる幻想（1943）
オリオン星座（1948）
海よ俺らの歌に泣け（1961）

主な原作作品

銃後に咲く（1934）
* 娘三十人（1937）

もう一度検索