田坂さつき

田坂さつき（たさか さつき）氏は、1959年にこの世に生を受けた日本の哲学者です。現在は立正大学文学部哲学科において教鞭を執り、教授の任にあります。氏の専門分野は古代ギリシア哲学と倫理学であり、中でも哲人プラトンの思想を主要な研究対象として深く掘り下げています。

その研究活動に加え、田坂氏は教育者としても幅広い取り組みを行っています。大学での正規の授業の傍ら、カルチャーセンターにおいても哲学に関する講座を開設し、専門知識を持たない一般の人々にも哲学への扉を開いています。また、氏の教育活動における特筆すべき実践として、インターネットを活用した遠隔授業が挙げられます。この授業は、筋萎縮性側索硬化症（ALS）患者をはじめとする重度の障害を持つ人々の協力を得て実施されており、地理的・身体的な制約を超えた学びの機会を提供することで、哲学の普遍性とアクセシビリティを追求しています。これは、現代社会における教育のあり方や、テクノロジーと哲学の接点を示す革新的な試みと言えるでしょう。

田坂氏の学術的な経歴は、栃木県で生まれた後、1983年に千葉大学人文学部人文学科哲学専攻を卒業したことに始まります。その後、東京都立大学（1949-2011）の大学院人文科学研究科に進学し、1985年に修士課程を修了しました。さらに博士課程へと進み、1990年に満期退学しています。研究者としてのキャリアは、湘南工科大学工学部総合文化教育センターにて講師、後に准教授として教鞭を執ったことからスタートしました。そして2007年、立正大学文学部哲学科に准教授として着任し、2013年には同学科の教授に昇任し、現在に至ります。

これまでの研究成果は、数々の著作として結実しています。単著としては、『『テアイテトス』研究～対象認知における「ことば」と「思いなし」の構造～』（知泉書館、2007年）があります。これは、プラトンの主要対話篇の一つである『テアイテトス』における認識論的な議論、特に「ことば」と「思いなし」がいかに認知の構造に関わるかを探求した重要な研究です。共著としては、「工学教育におけるサービスラーニング」が『ボランティア教育における新地平』（ミネルヴァ書房）の第10章に収録されています。また、「重度重複障害者のウェルビーイングと技術－社会福祉法人訪問の家「朋」の実践をめぐる考察－」は、鈴木七美氏編の『「障害のない社会」にむけて－ウェルビーイングへの問いとノーマライゼーションの実践－』として刊行された『国立民族学博物館調査報告』102巻（2012年3月）に掲載されており、障害を持つ人々のウェルビーイングと技術の関連について考察しています。翻訳書としては、マリウス・ヴィクトリヌスの『讃歌I～III』があり、『中世思想原典集成』第四巻（平凡社）に収録されています。

田坂さつき氏は、長年にわたり古代ギリシア哲学、特にプラトン研究を中心に深い学術的探求を続けると同時に、大学教育、一般向けの啓蒙活動、そして障害を持つ人々との協力を通じた革新的な教育実践といった多岐にわたる活動を通じて、哲学研究とその社会への貢献に尽力しています。

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