田尻愛義

田尻愛義の生涯と外交活動

田尻愛義（たじり あきよし、1896年11月28日 - 1975年10月29日）は、日本の外交官として中国との外交に深く関わった人物である。彼は島根県に生まれ、1920年に東京高等商業学校を卒業後、京都市立第一商業学校で教諭として働く。その後、外交官および領事官試験に合格し、1925年から本格的に中国勤務を始めた。

中国での外交活動の始まり

田尻は1922年から1924年までイギリスに留学し、国際社会における日中関係の重要性を認識したことから、中国での勤務を希望した。1930年に再び中国に赴任し、天津での業務に従事しながら、関東軍による溥儀の脱出工作に関与。彼は工作に対して一定の批判を抱きながらも、結果的に黙認する立場を採った。その騒動後、田尻は、リットン調査団に対し「中国側の不法行為」として報告を行ったが、自身の良心に反する行為であったと振り返っている。

汪兆銘工作とその影響

1933年に東京に戻り、アジア局での勤務を経て、1938年には香港総領事に就任したが、彼の反汪兆銘の姿勢は変わらなかった。汪精衛（汪兆銘）を日本に引き入れるための工作には強い反発を示し、汪兆銘政府の成立時には彼が利己的であると痛烈に批判。田尻は、和平を望む中国国民の気持ちを無視した汪邸の傀儡政府を支持することには抵抗を覚えていた。

戦争への反対とその後の経歴

日米開戦時には外務省調査部長という地位にあり、戦争に強く反対。東條英機陸軍大臣に「日米戦争には何の役にも立たない」と述べ、辞任を申し出るも却下された。その後、特命全権公使および大東亜次官に就任し、戦後の対策を考えるよう訓示していた。しかし、彼の不満は募り、1944年には「フィリピンの島流し」という厳しい措置を受ける。

戦後の活動と評価

戦後は外務次官に就任し、1946年には依願免本官に。その後、淀川製鋼所や岩谷産業の役員、さらには東亜学院の院長として様々な役割をこなした。また、1955年の衆議院議員選挙に無所属で立候補したものの落選するなど、政治活動にも関与した。

田尻愛義は、その生涯を通じて外交活動に身を捧げ、特に中国との関係に強い関心を持ち続けた彼の姿勢は、当時の流れにおいて際立ったものであった。また、批判的に見る視点からの彼の言動は、今後の日本の外交に対する貴重な教訓を私たちに残している。

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