田島弥平旧宅

田島弥平旧宅についての詳細

田島弥平旧宅（たじまやへいきゅうたく）は、群馬県伊勢崎市境島村に位置する歴史的建物です。この旧宅は、明治初期に繁栄した養蚕業者である田島弥平の手によって改築されました。彼は「近代養蚕農家の原型」とも称されるこの民家を、独自の養蚕理論に基づいて作り変えました。

田島弥平とその業績

田島弥平（1822年 - 1898年）は、養蚕業に関する著書『養蚕新論』（1872年）と『続養蚕新論』（1879年）を執筆し、蚕種の製造と販売を行っていました。特に明治初期には「清涼育」という蚕の育成法を確立し、自宅の主屋の2階および納屋を蚕室に改装しました。この取り組みにより、彼は近代養蚕業の父とも呼ばれ、多大な影響を与えたのです。

弥平は、育成法の確立に加え、それに適した蚕室の設計も行い、広く普及しました。その功績が認められ、1892年には緑綬褒章を受けました。特に、彼が実践した「清涼育」は、蚕の健康を保ちながら高品質な生糸を生産するための重要な手法でした。

清涼育と島村式蚕室

田島弥平は、自然育から温暖育に切り替えようとしましたが、試行錯誤を重ねて「清涼育」を確立するに至ります。彼は、1856年に納屋を改造して2階建ての蚕室を作り、その後さらに改良を加えました。特に重要な改良点は、換気のためのヤグラを屋根に設置したことです。この構造が良好な育成に繋がり、1863年には彼の「清涼育」が確立されました。このように形成された「島村式蚕室」は、広く各地に広まることとなりました。

建物の概要

現在の田島弥平旧宅の主屋は1863年に建てられ、瓦葺きの総2階建てです。屋根には「総ヤグラ」と呼ばれる換気口があり、これは当時の養蚕農家には非常に革新的な設計でした。ヤグラは風通しを良くするため、蚕育成には欠かせないものであり、弥平はこの特徴を誇りにしていました。

さらに、昭和に入ってからは、主屋に隣接する新蚕室や古い納屋を基にした蚕室も設けられ、かつては賑やかな養蚕業の中心地として機能していました。しかし、現在は基壇の一部が残っているのみです。

文化財としての保護

田島弥平旧宅は、今日でも弥平の子孫が住んでおり、彼の業績を保存するため努力しています。1986年から1988年には公的な調査が行われ、2012年に国の史跡として認定されました。特に「近代養蚕業の展開を知る上で重要」との理由での登録は、彼の歴史的重要性を証明しています。

旧宅は2013年に「富岡製糸場と絹産業遺産群」として世界遺産リストに登録され、その価値が国際的に認識されています。

観光地としての魅力

田島弥平旧宅の最寄り駅はJR伊勢崎駅と本庄駅で、タクシーで約20分の距離です。観光客数は年間数千人程度ですが、世界遺産登録後は急増しており、特にゴールデンウィークには多くの人々が訪れます。今でも人が住んでいるため、屋内に立ち入ることはできませんが、庭先の見学は可能です。また、周辺には養蚕に関わる他の史跡や弥平の顕彰碑も存在し、訪れた人々にとって魅力的な場所となっています。

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