田島英三

田島英三は、1913年（大正2年）に埼玉県行田市で生まれ、1998年（平成10年）に生涯を閉じました。彼は、日本の物理学者として、原子力の研究と平和利用に生涯を捧げました。立教大学名誉教授であり、原子力安全研究協会の元理事長も務めました。

田島は、特に日本における「放射線影響」の概念の普及に大きく貢献しました。また、日本人として初めて国連職員（原子放射線の影響に関する国連科学委員会（UNSCEAR）初代科学担当官）として海外でも活躍しました。

1938年（昭和13年）に東京文理科大学（現・筑波大学）物理学科を卒業後、理化学研究所で仁科芳雄に師事し、原子核や原爆の研究に従事しました。戦後間もない時期には、日本学術研究会議による「原子爆弾災害調査特別委員会」の一員として、広島と長崎の原爆被災直後の現地調査を行いました。

1949年（昭和24年）にはシカゴ大学原子核科学研究所（エンリコ・フェルミ研究所）に滞在し、その後、1952年（昭和27年）に立教大学講師、翌年には同大学理学部教授に就任しました。1967年（昭和42年）には同理学部長に就任しています。

また、ビキニ被爆事件後の太平洋における放射能汚染調査にも従事しました。1974年（昭和49年）10月には、放射線漏れで航行不能となっていた原子力船「むつ」に乗り込み、汚染状況を点検し安全性を確認した上で帰港させました。

1956年（昭和31年）には、原子放射線の影響に関する国連科学委員会（UNSCEAR）の初代科学担当官に就任し、日本人として初の国連職員となりました。

1961年（昭和36年）には原子炉安全専門審査会委員、1972年（昭和47年）には原子力委員に就任しましたが、原子力行政を批判し1974年（昭和49年）に辞任しました。その後、1978年（昭和53年）から1987年（昭和62年）まで原子力安全委員会委員を務めました。さらに、「訪ソ原子力安全調査団」の団長として、チェルノブイリ原子力発電所事故発生直後の現地調査にも携わりました。

田島英三は、原子力の研究に携わる傍ら、その安全性の確保と平和利用に尽力しました。その功績により、勲二等旭日重光章を受章しています。

彼の活動は、原子力の研究開発だけでなく、その安全対策や放射線影響に関する知識の普及に貢献し、後世に大きな影響を与えました。

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