田村隆寿

田村 隆寿（たむら たかとし）氏は、1952年6月3日に福島県で生まれました。日本の高校野球界において、選手としては全国準優勝投手、指導者としては複数の高校を甲子園に導いた経歴を持つ人物です。

選手としての軌跡

野球との出会いは中学時代。湯本第二中学校で投手として活躍し、県大会では3位となるなど、早くからその才能を発揮しました。中学卒業後、一年間の浪人期間を経て、1969年に磐城高校へ進学します。高校入学当初は内野手でしたが、その後捕手に転向。高校2年生となった1970年には、捕手、そして5番打者として夏の甲子園に出場を果たしました。この大会では、優勝候補の一角であったPL学園高校との1回戦に臨みましたが、惜しくも1対2でサヨナラ負け。しかし、田村氏自身は2安打を放つなど存在感を見せました。

秋になり、新チームが始動した後も引き続き捕手を務めていましたが、秋季大会でチームのエース投手が打ち込まれたことを機に、田村氏が投手へ再転向することになります。投手転向直後はなかなか勝利を掴めず、翌年春まで苦戦が続きましたが、持ち前の努力でシュートやシンカーといった変化球を習得。投球術を磨き上げました。

そして迎えた高校3年生の夏、エースであり4番打者として、二年連続となる夏の甲子園出場を果たします。この第53回全国高等学校野球選手権大会で、田村氏は驚異的なピッチングを披露しました。2回戦から登場し、まず優勝候補と目されていた日大一高と対戦。保坂英二投手を擁する相手打線をわずか4安打に抑え込み、三塁を踏ませない完璧な投球で1対0の完封勝利を飾ります。続く準々決勝でも静岡学園高校を5安打無失点に抑え、3対0で勝利。準決勝の郡山高校戦では8安打を許したものの、要所を締める投球で4対0と再び完封。これで開幕から27イニング連続無失点という記録を打ち立てました。

決勝戦の相手は、大塚喜代美投手を擁する桐蔭学園高校でした。両投手の息詰まる投手戦は続き、0対0のまま試合は進みます。田村氏の無失点記録は34イニング目に突入した7回裏、ついに途切れることとなります。この大会で甲子園において唯一許したこの失点が、そのまま決勝点となり、磐城高校は0対1で惜敗。準優勝という結果に終わりました。しかし、その圧倒的な投球内容から、田村氏は「小さな大投手」と呼ばれ、その名を全国に知らしめました。大会後には、水谷啓昭氏や梨田昌孝氏らと共に高校日本選抜チームの一員としてハワイ遠征に参加。さらに同年秋の和歌山黒潮国体にも出場し、準々決勝では夏の甲子園決勝で敗れた桐蔭学園に雪辱を果たし勝利。準決勝で岡山東商業高校に逆転負けを喫しましたが、この試合では本塁打を放つなど、打撃面でも非凡な才能を見せました。

高校卒業後は日本大学に進学し、準硬式野球部でプレーしました。大学を卒業後、郡山市に本社を置く社会人野球チーム、ヨークベニマルに入社し、現役を続けました。

指導者としてのキャリア

現役引退後、田村氏は指導者の道へ進みます。1977年には安積商業高校の野球部監督に就任。監督として1979年と1982年の二度、夏の甲子園に同校を導きましたが、いずれも初戦で敗退という結果に終わりました。

その後、常磐興産株式会社の社員を経て、1983年には母校である磐城高校の野球部監督に就任しました。1985年には再び夏の甲子園に出場を果たしますが、ここでもまた初戦敗退という悔しい結果となりました。磐城高校の監督は1987年4月まで務めました。

1988年11月には、聖光学院高校の嘱託職員として5年契約を結び、野球部監督に就任します。当時の聖光学院はまだ全国的な強豪という位置づけではありませんでしたが、田村氏の指導のもと、チームは着実に力をつけます。1991年秋には、同校を初めて県大会優勝に導き、秋季東北大会へと駒を進めました。しかし、初戦の準々決勝で、後に大会を制する仙台育英高校と対戦。延長15回に及ぶ熱戦の末、1対2でサヨナラ負けを喫しました。同年12月に入り、田村氏は健康上の理由から監督退任を申し入れ、12月25日にそれが受理されました。

選手として準優勝投手、指導者として3校を甲子園に導いた田村隆寿氏は、そのキャリアを通じて福島県の高校野球界に多大な貢献を果たしました。

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