田舎の日曜日

田舎の日曜日（Un dimanche à la campagne）

1984年に公開されたフランス映画。監督はベルトラン・タヴェルニエ。ピエール・ボストの原作を基に、タヴェルニエ自身が妻コロ・タヴェルニエと共に脚本を手がけた。第一次世界大戦が始まる数年前の、穏やかな秋の日曜日を舞台に、一人の老画家と彼の家族が織りなす一日を描いた作品であり、家族が集まることで見えてくるそれぞれの人生、内面の葛藤、そして過ぎゆく時間といったテーマを、深い洞察と美しい映像で描き出している。

物語の舞台は1912年秋、パリ郊外。老境に入った画家ラドミラル氏は、家政婦と共に静かな日々を送っていた。その日の朝、彼はパリに暮らす息子ゴンザグの一家が訪れるのを心待ちにしている。やがて、息子夫婦と三人の孫たちが到着し、家の中はにわかに賑わいを取り戻す。賑やかな昼食が終わり、ラドミラル氏が庭でまどろんでいると、予期せぬ訪問者が現れる。それは、めったに実家を訪れない娘のイレーヌだった。パリでブティックを経営するイレーヌは、まだ若々しく洗練された雰囲気を持つが、どこか落ち着かない様子で、頻繁に電話を気にしている。未婚の彼女は、恋人からの連絡を待っていた。

庭で遊ぶ孫たちは、田舎の静けさに飽きてくる。一方、電話がかかってこないことに苛立ちを募らせたイレーヌは、急にパリへ帰ると言い出す。父ラドミラル氏は娘をなだめ、自身のアトリエへ誘う。アトリエで自身の絵を見せながら語らう父娘。ラドミラル氏は、かつて風景画を描いていたが、近年はアトリエ内の静物を描くようになったこと、そして自身の独創性に悩みながらも、自分らしさを信じ、可能性を追い求めてきた胸の内を語る。イレーヌは、父が抱えてきた苦悩と、現在の静かで確かな境地を理解し、父が過去に描いた風景画からほとばしる情熱に心を動かされる。

イレーヌに誘われ、父娘は車でドライブに出かける。森の中のレストランに立ち寄ったラドミラル氏は、亡き妻との思い出を懐かしそうに語る。そしてイレーヌに促され、二人は共に踊る。家に戻った二人のもとには、待っていたパリからの電話が。その直後、イレーヌは慌ただしく家を出ていく。父は、そんな娘を静かに見送る。

夕食を終え、駅までゴンザグ一家を見送ったラドミラル氏は、再びアトリエへと向かう。自身の老いた手を静かに見つめた後、イーゼルにかかっていた描きかけの絵を取り外し、真新しいキャンバスをセットする。それは、過ぎ去った一日と、これから始まる新たな創作の日々を示唆しているようだった。

本作は、その静謐な雰囲気と登場人物の繊細な心理描写が高く評価され、国内外で数々の賞を受賞した。

主なスタッフ

監督：ベルトラン・タヴェルニエ
脚本：ベルトラン・タヴェルニエ、コロ・タヴェルニエ
原作：ピエール・ボスト
製作：ベルトラン・タヴェルニエ、アラン・サルド
撮影：ブリュノ・ド・ケイゼル
音楽：ガブリエル・フォーレ

主なキャスト

ルイ・デュクルー：ラドミラル氏
サビーヌ・アゼマ：イレーヌ
ミシェル・オーモン：ゴンザグ
ジュヌヴィエーヴ・ムニック：マリー・テレーズ
モニーク・ショメット：メルセデス
トマ・デュヴァル：エミール

受賞歴

1984年 第37回カンヌ国際映画祭：監督賞（ベルトラン・タヴェルニエ）
1984年 ロンドン映画批評家協会賞：外国語映画賞
1984年 ナショナル・ボード・オブ・レビュー賞：助演女優賞（サビーヌ・アゼマ）、外国語映画賞
1984年 ニューヨーク映画批評家協会賞：外国語映画賞
1985年 第10回セザール賞：最優秀女優賞（サビーヌ・アゼマ）、脚色賞、撮影賞
1985年 第40回毎日映画コンクール：外国映画ベストワン賞

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