男の敵

映画『男の敵』について

『男の敵』（原題：The Informer）は、1935年にRKOによって制作されたドラマ映画で、1922年のアイルランド独立戦争を舞台にした物語です。原作はリーアム・オフラハティの小説『The Informer』であり、これが本作の基盤となっています。

あらすじ

物語は1922年、イギリスに統治されたアイルランドのダブリンで展開されます。主人公のジポ・ノーラン（演：ヴィクター・マクラグレン）は、アイルランド独立を目指す組織の指示に従わず、仲間を裏切ることを拒む理由で孤立し、経済的に困難な状態に置かれています。彼は生活に困窮し、過去の友人であるフランキー・マクフィリップ（演：ウォーレス・フォード）と再会します。

この再会によって物語は進展しますが、フランキーは警察から追われている身でした。ジポはフランキーに実家に戻るようアドバイスをしますが、その直後、ジポの恋人であるケイティ（演：マーゴット・グラハム）が金に困った挙句、フランキーの居場所を警察に密告してしまいます。この決断が悲劇を引き起こし、フランキーは警察に追われ、逃げるも撃たれてしまいます。

独立組織の隊長ダン・ギャラガー（演：プレストン・フォスター）は、この密告を重く受け止め、密告者を早急に捕まえるよう命じます。ジポもまた、密告者を見つけることで組織への復帰を約束されるのですが、彼自身が密告を行ったことで組織のメンバーたちから疑われることになります。ジポが貰った20ポンドを使って困っている市民に施しをする姿を見せる一方で、組織の首脳たちは次第にジポに不信感を抱くようになります。

結末

ジポはついには自らの密告を自白してしまい、組織からの処刑の危機に直面します。しかし、ダンの恋人であるメリー・マクフィリップ（演：ヘザー・エンジェル）の介入により、すぐに命を奪われることは免れます。それでも彼の運命は厳しく、牢獄から脱出することを決意し、逃げる途中で再びケイティの元へ戻ります。しかし、彼が安全に寝入ったあと、ケイティはダンの元へ向かうのです。

考察

この作品はリーアム・オフラハティの小説が初めて映画化されたものですが、実は1929年には別のバージョンも存在しています。その時の作品はあまり評価されていませんでしたが、本作はアカデミー賞を含む多くの賞を受賞し、映画史に名を刻むこととなりました。特に、ジョン・フォード監督と主演のヴィクター・マクラグレンは大きな評価を受け、作品全体のクオリティを高めました。

主な受賞歴

本作はアカデミー賞において、監督賞をジョン・フォードが受賞し、主演男優賞はヴィクター・マクラグレンが獲得しました。また、脚色賞や作曲賞でも受賞歴があります。さらに、ニューヨーク映画批評家協会賞やヴェネツィア国際映画祭の脚本賞など、数々の栄誉が与えられています。

本作のストーリーは、裏切りと復帰、愛と絶望が交錯し、人間の複雑な感情を浮き彫りにしています。そのため、アイルランド独立戦争という大きな歴史的背景の中で、個々の人物の選択や行動がどのように運命を左右するのかを考察する良い素材となる作品です。

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