男はつらいよ 望郷篇

映画『男はつらいよ 望郷篇』について

「男はつらいよ 望郷篇」は、1970年8月26日に公開された日本映画で、人気シリーズの第5作目にあたります。当初はこの作品でシリーズを完結させる予定でしたが、前作の観客動員数が予想を遥かに上回ったため、シリーズが延長されることになりました。これに際して、シリーズ過去のキャストが出演し、特にマドンナ役にはテレビドラマでおなじみの長山藍子が起用されています。

あらすじ

本作は、主人公・寅次郎が不吉な夢を見たことから始まります。おいちゃんの健康を心配し、上野駅に戻った寅次郎は、冗談を真に受けたとらや一家にからかわれます。その結果、葬式の準備を進める羽目になり、柴又中で騒動が起きます。翌日、寅次郎は遊びに行った朝日印刷で真面目に働くことを軽視する発言をしますが、舎弟・登から、かつて世話になった極道者・竜岡正吉の危篤を知らされます。

恩返しのため、正吉の看取りを決意した寅次郎ですが、北海道へ渡るための資金を集めることに苦労します。最終的に、妹のさくらからの金の貸し出しを受け、北海道への旅を決行します。

北海道で待っていたのは、かつての羽振りとは真逆の、病室に寝たきりの正吉でした。正吉は自らの私生児に会いたいと願い、息子の石田澄雄を探すよう寅次郎に頼みます。しかし彼の息子は、労働に明け暮れている真面目な若者でした。また、澄雄は父親との再会を望んでいないことが判明します。正吉が亡くなった後、寅次郎は自らの未来に暗澹たる思いを抱くのです。

自らの生き方を見直し、「堅気になろう」と決意した寅次郎は柴又に帰ります。地道に生活をすることを宣言しますが、地元では働く場所が見つからず、失意の中、失踪してしまいます。しかし数日後、さくらのもとに寅次郎から大量の油揚げが届き、彼が豆腐屋で働き始めたことが判明します。

豆腐屋での生活に喜びを見出す寅次郎ですが、新しい女の子・節子との出会いによって再び恋に落ちます。その一方で、節子の恋人が現れ、彼女との関係が難しくなる中で、寅次郎は悩むことになります。そして、自らの労働意欲が節子に依存していることに気づき、三七十屋を去る決断をします。

サブプロットとテーマ

本作は単なるコメディではなく、友情や愛、人生の選択と後悔といったテーマを織り交ぜる壮大な物語になっています。寅次郎の無邪気さは時に失ってしまった情熱を思い起こさせ、それが一連のエモーショナルな出来事に対して観衆の共感を呼び起こします。さらに、登と再会した際の皮肉なセリフが彼らの変わらぬ関係を象徴しており、作品全体に深みを与えています。

スタッフと配役

映画の監督は山田洋次が担当し、脚本も彼が手がけています。主演の寅次郎役には渥美清が務め、さくらには倍賞千恵子がキャスティングされています。さらに、長山藍子や井川比佐志など様々な俳優陣が脇を固めています。

このように「男はつらいよ 望郷篇」は、単なるエンターテインメントを越えた、深いメッセージを秘めた作品として多くの心を掴んでいます。

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