畑野智美

畑野智美（はたの ともみ）

日本の小説家である畑野智美氏は、1979年5月19日に東京都世田谷区に生まれました。桐光学園中学校・高等学校で学び、その後、東京女学館短期大学国際文化学科を卒業しています。

作家への道

大学卒業後、畑野氏は小説家を志し、その夢を実現するため様々な職を経験しました。漫画喫茶、新聞社、映画館、そして出版社である白夜書房など、多岐にわたるアルバイトをしながら執筆活動を続けます。こうした経験が、後に描かれる多様な人物像や社会の断面描写に深みを与えているのかもしれません。また、20歳を迎える頃には、演劇のワークショップに参加し、そこで声優の能登麻美子氏と出会うという交流もありました。

デビューと評価

長年の努力が実を結び、2010年、畑野氏の作品「国道沿いのファミレス」が第23回小説すばる新人賞に輝きました。この受賞作は翌2011年に書籍化され、畑野氏は小説家として正式にデビューを果たします。

デビュー後も精力的に執筆活動を行い、その作品は文学界で高い評価を得ています。特に、『海の見える街』（2012年刊行）は2013年に第34回吉川英治文学新人賞の候補に、そして『南部芸能事務所』（2013年刊行）は2014年に第35回吉川英治文学新人賞の候補に選ばれるなど、主要な文学賞の最終候補に複数回名を連ねています。

主な著作

畑野智美氏の作品は多岐にわたりますが、中でも芸能事務所を舞台にした「南部芸能シリーズ」は代表的なものの一つです。このシリーズには、候補作にもなった『南部芸能事務所』（2013年6月 講談社）をはじめ、『メリーランド』（2014年5月 講談社）、『春の嵐』（2015年6月 講談社）、『オーディション』（2016年5月 講談社）、そしてシリーズの原点ともいえる作品群を収録した『コンビ』（2017年6月 講談社）などがあります。これらの作品は多くが後に講談社文庫として再版され、より多くの読者に届けられています。

シリーズ以外の単行本にも注目すべき作品が多くあります。デビュー作である『国道沿いのファミレス』（2011年2月 集英社）は、その後の活躍の礎となりました。候補作『海の見える街』（2012年12月 講談社）は「マメルリハ」「ハナビ」「金魚すくい」「肉食うさぎ」といった短編を収録しています。また、駅や電車を舞台にした連作短編集『運転、見合わせ中』（2014年8月 実業之日本社）や、少しファンタジックな要素を含む『ふたつの星とタイムマシン』（2014年10月 集英社）など、幅広いテーマに挑んでいます。その他の作品には、『夏のバスプール』（2012年7月 集英社）、『夏のおわりのハル』（2015年3月 講談社）、『みんなの秘密』（2015年8月 新潮社）、『感情8号線』（2015年10月 祥伝社）、『罪のあとさき』（2016年9月 双葉社）、『タイムマシンでは、行けない明日』（2016年11月 集英社）、『家と庭』（2017年2月 KADOKAWA）、『消えない月』（2017年9月 新潮社）、『シネマコンプレックス』（2017年11月 光文社）、『大人になったら、』（2018年3月 中央公論新社）、『水槽の中』（2018年7月 KADOKAWA）、『神さまを待っている』（2018年10月 文藝春秋）などがあります。近年では、『若葉荘の暮らし』（2022年9月 小学館）や『トワイライライト』（2023年3月 twililight）といった作品も発表しています。これらの作品の多くも文庫化されており、長く親しまれています。

畑野智美氏は、日常に寄り添いながらも、ときにユーモアや哀愁を交え、人間の心の機微を丁寧に描き出す作家として、今後の活躍も期待されています。

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