留魂録

『留魂録』の概要と影響

概要

『留魂録』（りゅうこんろく）は、幕末の長州藩において特に著名な思想家である吉田松陰が、1859年（安政6年）に獄中で書き上げた遺書です。この書は、松下村塾の門弟たちに向けて書かれ、彼らの志向や行動力に大きな影響を与えました。当時、松陰は幕府に対する反抗的な思想を持ち、藩の重臣たちとの対立が深まっていました。


1858年（安政5年）、松陰は幕府の老中である間部詮勝の暗殺を計画し、藩に武器の提供を申し出ました。しかし、この行動は藩の重臣たちを驚かせ、彼は野山獄に投獄されることとなります。その後、幕府は松陰を東送し、取調べを行いますが、彼は暗殺計画を自白することによって重罪の疑いをかけられ、最終的には小伝馬町に投獄されます。


松陰は、自身の処刑を間近に感じる中で、門徒に向けた思いを綴るため、10月25日から26日にかけて『留魂録』を書き上げました。この書は、松陰が直接門弟たちにその志を伝えるためのものであり、彼の生き様が反映されています。

解題

『留魂録』は、松陰が獄中で彼の思想や信念、そして後世への伝言を残すために書き起こしたものです。松陰は、獄中で直筆の書を二通作成しました。一通は、彼の処刑後に門弟の飯田正伯の手に渡り、幸いにも塾生たちの間で広く伝わることとなりました。しかし、その正本は行方不明となっています。もう一通は、松陰と同じ牢にいた沼崎吉五郎によって持ち出され、維新を迎えるまで彼が大切に保管していました。この沼崎の手によって、松陰の意志は生き続けました。


1874年（明治7年）に沼崎が東京に戻り、松陰にゆかりのある人物と再会したことで、別本の存在が明らかになりました。松陰の言葉は、彼の著作においても強く印象に残っており、特に「留魂録」と同時期に書かれた「諸友に語ぐる書」では、彼の志というものが怎样に重要なのかを訴えています。

内容

『留魂録』は全16章にわたり、冒頭には「身はたとひ武蔵の野辺に朽ぬとも留置かまし大和魂」と記されており、彼の強い意志を感じることができます。最後の句には、人々に向けての思いが込められており、「愚かなる吾れをも友とめづ人はわがとも友とめでよ」と、友に対する想いが表現されています。

このように、『留魂録』は吉田松陰の生き様、思想、そして門弟に向けた熱いメッセージが詰まった重要な文献です。幕末の志士たちに大きな影響を与えたこの遺書は、今なお多くの人々に感動を与え続けています。

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