番記者

番記者について

番記者は、特定の取材対象者に対して密着取材を行う記者を指します。この役職は、報道において非常に重要な役割を果たしています。彼らの主な使命は、対象者の動きや発言を逐次追い、貴重な情報やコメントを引き出すことです。特に政界においては、番記者の存在が不可欠であり、各種メディアは与党や野党の有力政治家や派閥に対して番記者を配置し、情報収集に勤しんでいます。

配置された番記者は一般的に「◯◯（取材対象者の名前または役職）番」と呼称されます。彼らは様々な取材スタイルを持ち、公式な記者会見から非公式なインタビュー、さらには移動中の「ハコ乗り」や、早朝や深夜に対象者の家を訪れる「夜討ち・朝駆け」など、多様な手法を用いて接触を図ります。さらに、警察幹部や捜査員を対象にした「夜回り」や「サツ回り」と呼ばれる取材スタイルも存在し、初任の記者が研修として何年か配属されることがあります。

スポーツ報道でも同様に選手や監督に番記者がつき、試合後にコメントを引き出して記事にすることが一般的です。著名な作家フレデリック・フォーサイスは、ロイターの特派員時代にフランスのシャルル・ド・ゴール大統領の番記者を務め、その際に得た情報を元に小説『ジャッカルの日』を執筆しました。

番記者に関する問題点

しかし、番記者には潜在的な問題点も存在します。対象者との関係が密接になることで、癒着や偏見が生まれやすくなるのです。取材対象者との関係を維持することに注力するあまり、その思想に影響を受け、自らの報道の使命を見失ってしまう例も少なくありません。実際に、読売新聞社の主筆である渡辺恒雄は、彼の著書『渡辺恒雄回顧録』において1960年の「60年安保騒動」に関連する事件で、日本国政府の声明文を執筆していた自身の行動を振り返り、取材の立場を忘れていたことを告白しています。

また新聞社内部でも、事件を追い続ける記者が主導権を握ることで、専門知識を持たない社会部の記者が突然、原発問題などの専門分野に配属され、分析能力が欠如していると問題視される事例もありました。こうした現象は、報道の質を低下させる要因となります。

結論

番記者は重要な情報を収集し、報道に影響を及ぼす存在である一方で、関係の持ち方や取材方法には慎重さが求められます。真実を追求し、公共の利益に役立つ情報を提供するためには、彼ら自身が取材のバランスを保ち、倫理的な視点を失わないように努めることが必要です。

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