異端の純愛

異端の純愛

井口昇監督が企画、脚本、プロデュースを手掛けた異色の恋愛映画。2023年5月27日に公開された本作は、従来の恋愛映画の枠を超え、屈折した愛やマイノリティの葛藤を描いたオムニバス作品。

概要

井口監督は、過去の作品群から「フェチ作品の監督」というレッテルを貼られた経験から、改めて自身の撮りたいものを追求。その結果生まれたのが本作であり、映画批評家の宇田川幸洋氏は「異端と純愛、両者が井口のシンにあることを省察、自覚して作品化した映画」と評しています。

監督自身は、自身の嗜好以外の要素を排除し、素直な気持ちで正直に撮ることを心掛けたと語ります。また、愛を描く映画でありながら、性的な描写は一切排除。代わりに、ヒロインが腹痛に苦しむ場面を多用することで、自身が排泄に苦しんだ経験から、異性が同じ痛みを共有する姿に憧れた、という独特な初恋の形を表現しています。

オムニバス構成

映画は以下の3つの作品で構成されています。

うずく影

デザイナー系の編集プロダクションを舞台に、ライターの由美と上司の哲也の関係を描きます。哲也は由美に奇妙ないたずらを仕掛けて満足する一方、精神的に追い詰められた由美の背後には謎の“影”が現れます。ある日、由美がペディキュアを塗った足を差し出すと、哲也は跪きますが、そこには男性のものと思われる汚く割れた親指の爪を持つ足が現れ、哲也の頭を踏みつけます。

由美：山本愛莉
哲也：大野大輔

片腕の花

姉と2人暮らしの高校生・小出裕輔は、喫茶店で美しい女性アミと出会います。アミは左手の肘から先がなく、その片腕からは時に百合が咲き、時にナイフを出すという秘密を持っていました。クラスメイトにいじめられていた裕輔は、姉の恋人に姉を略奪され、アミから「復讐するべき」と唆されます。

小出裕輔：岡田佳大
アミ：八代みなせ
姉：山本愛莉
クラスメイト：井上智春、まお（せのしすたぁ）
姉の恋人：中村優一

バタイユの食卓

カメラ少年・二瓶烈は、子供の頃のトラウマから食事と排泄に罪悪感を抱いています。喫茶店のウエイトレス・珠子から食事に誘われますが、パニックを起こしてしまいます。珠子は腹痛を起こす性分であり、その原因は腹の中にグロテスクなモンスターを飼っていると思い込んでいました。烈は珠子の排泄写真を撮影し、モンスターがいないことを証明しようと提案します。これは監督自身の幼少期の体験を投影した作品であり、二瓶烈は女性である九羽紅緒が演じています。

二瓶烈：九羽紅緒、幼少時：井口昇
珠子：中村有沙

スタッフ

監督：井口昇
脚本：井口昇
企画プロデューサー：井口昇
プロデューサー：福田裕彦
撮影：松原晃平
音楽：福田裕彦
配給：大頭、ワンダーヘッド

総括

『異端の純愛』は、井口昇監督の作家性が色濃く反映された作品であり、タブーに挑戦する姿勢や、独特な美的感覚が際立っています。3つの物語を通じて、普遍的な愛の形を問いかける、意欲作と言えるでしょう。

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