病院坂の首縊りの家

『病院坂の首縊りの家』

『病院坂の首縊りの家』は、横溝正史の著する長編推理小説であり、金田一耕助シリーズの中でも特に人気があります。本作は1975年から1977年まで『野性時代』に連載されていましたが、その根底には1954年に発表された短編「病院横町の首縊りの家」が存在しています。この短編は当初3回にわたる予定でしたが、横溝の病気により中断を余儀なくされました。長編は2部構成で、初めの部では生首風鈴事件が発生し、その後20年を経て新たな連続殺人事件が展開され、全てが明らかになります。

概要

本小説は港区高輪が舞台で、主人公の金田一耕助が複雑な人間関係や隠された事実に迫りながら、事件を解決していく様子が描かれています。特に、作品中に登場する「病院坂」は実在の場所であり、横溝が地域を取材した痕跡を示しています。この坂道はさまざまな名称で呼ばれており、地域住民に根付いた文化が垣間見えます。

物語は昭和28年から始まり、写真館を営む家族の長男・直吉が奇妙な結婚記念写真の撮影を依頼されたことから幕を開けます。撮影場所は廃墟であり、そこでの不吉な出来事が金田一の介入を促します。この廃墟で直吉は天井から吊るされた男性の生首を発見し、事件は迷宮入りしてしまいます。

20年後、金田一は退職後に秘密探偵事務所を開設した等々力大志と共に、直吉が再び命を狙われる事件に巻き込まれます。最終的に直吉は殺害され、金田一は過去の事件を解決するための手掛かりを見つけ出していくのです。物語のクライマックスには各キャラクターの真意や関係が明らかになり、読者は緊張感と興奮の中で結末を迎えます。

登場人物と家系図

物語には多彩なキャラクターが登場し、特に金田一耕助が事件を解決するために奔走する姿が印象的です。上巻、下巻それぞれに登場人物があり、彼らの関係性や背景が物語をより豊かにしています。作品の終盤で明らかになる親子関係や人間ドラマは、読者に深い感動を与えます。

原型となった短編

本作の原型となった短編は、結婚記念写真の撮影を通じて展開されたもので、長編とは異なる設定が取り入れられていました。この短編が執筆された後、横溝はさらにストーリーを膨らませて長編に至ったのです。

映像作品

『病院坂の首縊りの家』は、公開された1979年の映画版と1992年のテレビドラマ版でも知られており、それぞれ異なる解釈がされています。特に映画版は横溝の緻密な描写が映像として表現され、テレビドラマ版も原作の要素を生かしつつ新たな視点が加えられています。

このように、『病院坂の首縊りの家』は横溝正史の真骨頂とも言える作品であり、推理小説の金字塔として広く知られています。

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