瘻孔

瘻孔：体内の異常な接続

瘻孔（ろうこう、英: fistula）は、体内の血管、腸、その他の管腔臓器、あるいは体外とを繋ぐ異常な管のことです。正確には、2つの上皮化された表面（体腔や臓器の内腔など）が、本来あるべきではない形で接続している状態を指します。この異常な接続は、体内の様々な部位で発生しうるため、その種類も多岐に渡ります。

瘻孔の発生原因は様々です。多くは、感染症や炎症による組織の破壊が原因となります。例えば、炎症によって組織が壊死し、隣接する臓器や体腔と繋がって瘻孔を形成するケースがあります。また、外傷や手術、放射線治療なども瘻孔の原因となります。手術中に臓器を損傷したり、術後の癒合不全によって瘻孔が生じる場合があります。さらに、先天性の奇形が原因で発生する場合もあります。先天性耳瘻孔などがその例です。

瘻孔は、必ずしも病的な状態とは限りません。治療目的で意図的に作られる場合もあります。例えば、嚥下困難な患者に対する栄養補給のために、胃に直接管を挿入する胃瘻（いろう）は、人工的に作られた瘻孔の一種です。同様に、消化管内腔の減圧を行うためにも、人工的に瘻孔が作られることがあります。これらの治療的な瘻孔は、患者の生命維持や症状改善に大きく貢献します。

一方、病的な瘻孔は様々な症状を引き起こす可能性があります。例えば、消化管瘻孔では、消化管の内容物が瘻孔を通じて体外に漏出したり、他の臓器に感染を起こしたりすることがあります。尿路瘻孔では、尿が漏出したり、感染を起こしたりする可能性があります。これらの症状は、患者のQOLを大きく損ないます。

日本の産科領域では、特に児童出産に関連する産科瘻孔（Fistula of vagina to large intestine、Vesicovaginal fistula）を「フィスチュラ」と呼ぶことが一般的です。これは、出産時の外傷によって膣と大腸、または膀胱と膣の間に異常な接続が形成されるもので、重篤な合併症を引き起こす可能性があります。

植物学においては、瘻孔（fistula）は形容詞として使用され、管状構造を持つ植物種を分類する際に用いられます。例えば、ヤグルマハッカ（Monarda fistulosa）は管状の花を、Eutrochium fistulosumは管状の茎を、ネギ（Allium fistulosum）は中空または管状の葉を、Acacia seyal ssp. fistulaは中空の棘を持つ種として知られています。

このように、瘻孔は医学、植物学など、様々な分野で用いられる用語であり、その意味や用法は文脈によって異なります。しかし、いずれの場合も、本来は繋がっているべきでない部位が異常につながっている状態を表している点は共通しています。 瘻孔の診断と治療は、原因や部位、症状によって異なり、専門医による適切な対応が求められます。

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