発禁

発禁（はっきん）について

概要

発禁は『発行禁止処分』や『発売・頒布禁止処分』の略称であり、特定の表現物の流通を制限する制度を総称しています。このような処分は、出版物や音楽、映画などの内容に問題があるとされた場合に施されます。無償で頒布されるものも対象に含まれますが、どのような内容が発禁とされるかは地域や時代によって異なります。

日本の戦前には、特定の号の発売や頒布を禁じる「発売頒布禁止処分」と、以後の号の発行を全て禁止する「発行禁止処分」が存在し、こちらは根拠が異なる法律に基づいて行われていました。現在、国立国会図書館は、かつて発禁となった書籍を所蔵しています。

現行の事例

中華人民共和国

例として、中国では1998年のアカデミー賞にノミネートされた「クンドゥン」、ダライ・ラマ14世の伝記映画が上映禁止となっています。また、社会問題に関わる映画「迷失北京」は、政府の方針に反する内容として上映を禁じられました。内容に対して当局は映画の改訂を指示します。

日本

日本では、現在の法律体系において、憲法第21条が検閲を禁止しています。発禁処分は民事訴訟の結果として、裁判所が出版の差止めを命じることによって行われます。これは主に名誉毀損やプライバシー侵害、著作権侵害に基づくものであり、一般に「発売禁止」とも呼ばれます。

アメリカ合衆国

アメリカでも、報道の自由が憲法修正第1条で保障されている一方で、個人のプライバシーが問題され発禁処分が発生しています。最高裁の判断では、一度公開された情報であれば合法とされることもあります。この中で著名な事例としてFlorida Star v. B. J. F.があります。

イギリス

イギリスでは、裁判の妨害を防ぐため「Contempt of Court Act 1981」に基づき発禁となることがあります。また、性的暴行の被害者に関する情報も法律で発禁とされています。

カナダ

カナダの法律では、性的暴行被害者や児童に関する個人情報の公開に厳しい制限があります。特に、犯罪に関連する情報が必要と判断され場合には発禁処分が行われることがあります。

過去の事例

日本

戦前、検閲は様々な法律に基づいて行われ、思想や性描写に対する発禁処分が存在しました。特に「安寧秩序紊乱」と「風俗壊乱」などに分類される処分が頻繁に適用されました。

戦後には連合国による検閲が行われ、批判的な内容は発禁となり、その後の日本の出版業界にも影響を与えました。現代でも、特定の書籍や映画に対して発禁処分が適用される場合があります。

結論

発禁は表現の自由と公共の利益との間の難しいバランスの中で生じる制度です。それぞれの国で発禁の適用方法や内容は異なるため、現在もなお重要な社会的課題であり続けています。

もう一度検索