白い闇

白い闇

松本清張の短編小説『白い闇』は、1957年8月に『小説新潮』に初めて掲載され、その後短編集としても出版されました。この作品は、失踪した夫を探す女性の苦悩と、その裏に隠された真実を描いています。

あらすじ

物語の主人公、信子の夫である精一は、仕事のために出かけたはずが突然行方不明になってしまいます。精一の従弟である俊吉と共に会社に電報を打った信子ですが、返信は彼が北海道に一度も来たことがないというものでした。信子は俊吉にこの結果を告げますが、俊吉は更なる衝撃の事実を明かします。それは、夫が青森に別の女性、田所常子を持つ隠れた存在であるということです。

信子は青森に向かい、意を決して常子と対面しようとしますが、逆に彼女の強い存在感に圧倒されてしまいます。信子は東京へ帰る際、まるで病にかかったように疲れ果てていました。しかし、彼女の運命を大きく揺るがす事件がその後2ヵ月後に発生します。

エピソード

この作品のアイディアは、松本清張が十和田湖を訪れた際の体験から生まれたとされています。清張は取材のために旅行し、その際に出会った人々や情景が作品のインスピレーションとなったと語っています。また、作中に登場する新婚夫婦は、清張が宿泊先で出会った実際のカップルを基にしていると言われています。清張は、自らの旅行を通じて感じた緊張感や不安が作品の根底に流れていると述べています。

この作品は、ただのサスペンスや推理小説としてだけではなく、人間の心理や社会的な葛藤を描いたテキストとも評価されています。作家の有栖川有栖は、作品の魅力を「人間観察や心理を深く掘り下げた文章と、興味を引く発端や驚きのある結末にある」と評しました。彼はまた、この作品が当時の推理小説の一つの完成形であると結論づけています。

テレビドラマ

『白い闇』は、放送当初から様々なバージョンとしてテレビドラマ化されています。

1. 1959年版 - 1作目は、KRテレビ（現TBS）で放送され、小関信子役に乙羽信子が主演しました。

2. 1961年版 - TBS系列で放送され、小関信子を月丘夢路が演じました。

3. 1962年版 - NHKでの放送では、吉行和子が信子を演じました。

4. 1977年版 - 再度TBSで放送され、視聴率21.5％を記録。吉永小百合が信子役を演じ、記憶に残る名作となりました。

5. 1980年版 - テレビ朝日で放送されたこのバージョンも高視聴率を獲得し、多くの視聴者に衝撃を与えました。

6. 1996年版 - テレビ東京系列での作品では、小関信子に大竹しのぶが起用されました。

7. 2005年版 - こちらでは、松本清張の他の作品との連動で新たにアレンジされたドラマとして放送されました。

このように『白い闇』は、原作小説と共に数多くのメディアで取り上げられ、時代を超えた魅力を持つ作品として多くの人に愛されています。

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