白と黒 (横溝正史)

「白と黒」 - 横溝正史の長編推理小説

概要

『白と黒』（しろとくろ）は、著名な推理作家・横溝正史による長編推理小説であり、金田一耕助シリーズに属しています。現代的な団地を舞台にしたこの作品は、横溝の他の作品と異なり、都市部の生活を背景にしています。角川文庫に収録されており（ISBN 4-04-130413-X）、その評価は高いです。

制作経緯

本作は、1948年に発表された人形佐七捕物帳『浄玻璃の鏡』が源流とされ、1957年に『週刊東京』で連載された『渦の中の女』が直接の原型です。この作品は、金田一耕助が活躍する典型的な推理小説の要素を持ちつつも、新たなキャラクターや設定が加わり、長編作品に再編成されました。1959年には『黒い蝶』として連載が試みられましたが、途中で中断。その後、1960年から1961年にかけて『白と黒』として再度連載され、その後改稿されて完成を見ました。1965年には、東都書房から『横溝正史傑作選集5』として正式に出版されています。

あらすじ

物語は1960年10月11日に始まります。探偵の金田一耕助は、古い知り合いである須藤順子の呼びかけに応じて、彼女の住む日の出団地を訪れます。団地内では不穏な噂が広まり、順子がそのことで悩んでいるとのことです。彼女の夫・達夫に宛てた怪文書は、順子の不倫を暴露する内容で、順子は不安に襲われています。その頃、団地内のダストシュートから女性の変死体が発見され、身元が判明しないまま様々な憶測が飛び交います。彼女は近くの洋裁店「タンポポ」の主人であり、事件は次第に深刻化していきます。

主な登場人物

• - 金田一耕助：私立探偵で、作品の中心人物。事件の解決に乗り出します。
• - 須藤順子：金田一の古い知り合いで、団地に住む女性。事件の発端となる怪文書に悩まされます。
• - 須藤達雄：順子の夫。怪文書によって彼女の不倫が露見する可能性に不安を覚えています。
• - 等々力大志：警視庁の警部で、金田一と協力して事件を追います。
• - 宇津木慎策：新聞記者で、事件を取材します。
• - 片桐恒子：洋裁店「タンポポ」のマダム。
• - 河村松江：片桐とともに「タンポポ」で働く手伝い。
• - その他、多様な団地住人や警察関係者が事件に絡んできます。

作品の評価と影響

『白と黒』は、横溝正史の作品群の中でも特に評価されている一作です。舞台が現代の団地に設定されている点は、当時の社会背景や生活様式を反映しており、読者に新鮮な感覚を与えました。また、登場人物が多様であり、それぞれに深い背景があるため、複雑な人間関係が事件の展開に影響を与える点が特徴的です。この作品は、映画やドラマにも数度にわたり映像化されており、その人気は衰えを見せません。特に、1962年にはテレビドラマとして放送され、注目を集めました。

『白と黒』は、横溝正史の遺した名作として、今後も多くの読者に親しまれることでしょう。

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