白井剛

白井剛（しらい つよし）は、1976年に長野県飯田市で生まれた、日本の舞踏家、振付家、ダンサー、映像作家である。コンテンポラリーダンスの分野において、身体表現と映像を融合させた独自のスタイルで知られ、国内外から高い評価を受けている。

千葉大学工学部工業意匠学科で学んでいた1995年、大学のモダンダンス部に入部したことを機にダンスの道を志す。翌1996年からは、現代を代表する振付家の一人である伊藤キムが主宰するダンスカンパニー「伊藤キム＋輝く未来」にダンサーとして参加し、2000年までの4年間、舞台経験を積んだ。この時期の活動は、その後のキャリアの礎となった。

ダンサーとしての活動と並行して、1996年には自身の創作活動の拠点となる「発条ト（ぜんまいと）」での振付家としての活動を開始する。発条トを母体とし、彼は次々と個性的な作品を発表していくことになる。

2000年、早くもその才能は国際的に認められる。フランスで開催されるバニョレ国際振付賞（Prix d'Auteur du Conceil general de la Seine-Saint-Denis）を受賞。これは若手振付家の登竜門として知られる権威ある賞であり、白井剛の活動を大きく加速させた。さらに、国内でも2002年と2003年の2年連続でトヨタコレオグラフィーアワードの最終審査会に選出されるなど、その振付家としての評価を確固たるものとした。

発条トを製作主体として生み出された作品には、初期の『Living Room - 砂の部屋』、『タイムニットセーター』、『テーブルを囲んで』（いずれも2000年）、『Swingin' Steve』、ソロ作品の『衝動とミディアムスロー』（2001年）、『彼／彼女の楽しみ方』（2002年）などがある。また、外部プロダクションとの共同製作も行っており、アイホール製作の『予定地Ｍ』（2003年）や、発条トとさきらの共同製作による『リビングルーム／さきら編』（2003年）なども彼の代表作として挙げられる。これらの作品を通じて、彼は日常生活の中にある微細な動きや空間の歪み、人間の内面を抽出し、独特のユーモアと批評性を交えながら描いてみせた。

振付家としてだけでなく、ダンサーとしても精力的に活動している。2004年には、愛知芸術文化センターがプロデュースしたダンスオペラ『悪魔の物語』（振付：ユーリ・ン）にダンサーとして参加し、高いパフォーマンス力を示した。同年11月には、東京のシアタートラムにてソロ作品『質量, slide , & .』を発表するなど、自己の身体を探求するソロ活動も行っている。また、異分野との関わりも深く、2006年度にはNHKの番組「あいのて」内のコーナー「ワニバレエ」に出演するなど、幅広い活動を展開している。

振付家、ダンサーとしての活動に加え、映像作家としても知られている。自身のダンス作品に映像を取り入れたり、独立した映像作品を制作したりすることで、身体と視覚表現の新たな可能性を追求している。この映像との融合は、彼の作品世界をより多層的で刺激的なものにしている要素の一つである。

長野県飯田市に生まれ、大学でダンスに出会い、プロの世界へ進んだ白井剛。ダンサー、振付家として国内外で実績を重ね、特にバニョレ国際振付賞受賞は、その独自の才能を世界に知らしめる契機となった。発条トを拠点に、身体、空間、映像、音響などを自在に組み合わせ、既成概念にとらわれない実験的な作品を生み出し続けている。彼の活動はコンテンポラリーダンスの可能性を広げるものとして、常に注目を集めている。

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