白兵戦章

白兵戦章（Nahkampfspange）について

白兵戦章は、第二次世界大戦中にナチス・ドイツが制定した、近接戦闘における功績を称えるための勲章です。この勲章は、ドイツ国防軍および武装親衛隊に所属する軍人の中で、一定期間、装甲兵力の支援なしに敵と直接戦闘を行った者に授与されました。

概要

白兵戦章の授与対象者は、戦車などの装甲兵力の支援を受けずに近接戦闘を行ったドイツ国防軍および武装親衛隊の軍人でした。この勲章は、軍服の左胸ポケットの上部に佩用されました。

近接戦闘の定義は、任務内容（攻撃、防御、斥候など）や場所（前線、後方陣地、輸送路など）を問わず、敵の表情が識別できるほどの至近距離で行われた戦闘でした。つまり、敵と直接対峙し、生死をかけた戦闘を行った兵士に与えられた勲章と言えます。

白兵戦章には、近接戦闘を行った日数に応じて、金章、銀章、銅章の三つの等級が存在しました。特に金章は、非常に名誉ある勲章とされ、その価値は騎士鉄十字章にも匹敵すると言われるほどでした。金章の受章者は、軍学校で自らの戦闘経験を教える任務を与えられたり、アドルフ・ヒトラー総統が直接授与することもありました。これは、彼らの戦闘における卓越した功績を称えるものでした。

また、負傷した兵士や東部戦線に従軍した兵士に対しては、必要な近接戦闘日数を減らすなどの優遇措置が取られました。これは、彼らが置かれた厳しい状況を考慮したものでした。受章者が既に死亡している場合、この勲章は遺族に送付されました。これにより、戦没者の功績も称えることができました。

ドイツ国防軍および武装親衛隊には、1800万人から2000万人の軍人が所属していましたが、白兵戦章の授与数は限られていました。具体的な授与数は、銅章が3万6400人、銀章が9500人、金章がわずか631人でした。この希少性からも、白兵戦章が非常に名誉ある勲章であったことが分かります。

種類と授与基準

白兵戦章は、その等級に応じて、異なる授与基準が設けられていました。

銅章:比較的短い期間の近接戦闘を行った者に授与されました。具体的な日数については、負傷の有無や戦線での勤務状況によって調整が行われました。
銀章:銅章よりも多くの近接戦闘を行った者に授与されました。こちらも、負傷や戦線での勤務状況が考慮されました。
金章:最も長期間、または特に困難な状況下での近接戦闘を行った者に授与されました。金章の授与は、非常に厳しい基準を満たす必要があり、騎士鉄十字章に匹敵する名誉とされていました。

これらの授与基準は、兵士の勇敢さと献身を公平に評価するために設けられました。

参考文献

「MILITARY FORCES OF THE THIRD REICH WW2ドイツ軍兵器集、火器/軍装編」（KKワールドフォトプレス、監修カンプ・グルッペ・ジーン）40ページ
* ロビン・ラムスデン著「ナチス親衛隊軍装ハンドブック」原書房 199ページ　ISBN 4562029293 ISBN 978-4562029297


白兵戦章は、近接戦闘における兵士の勇敢さと献身を称える重要な勲章でした。その希少性と名誉の高さから、受章者は大きな尊敬を集めました。

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