白縫 (花魁)

白縫（しらぬい）

白縫（しらぬい、生没年不詳）は、大正時代の吉原遊廓に在籍した娼妓です。彼女の生涯は、当時の遊郭における女性の悲惨な境遇と、そこから抜け出すための闘いを象徴しています。

生涯

白縫の本名は山中つるゑ。広島高等女学校を卒業後、東京新橋で芸妓「小美野」として働いていました。しかし、母親の借金が原因で、吉原の貸座敷「角海老楼」へ娼妓として移籍せざるを得なくなりました。

1914年4月、白縫は風邪で療養中でしたが、楼主らによって無理やり起こされ、大正博覧会の開催を機に復活した花魁道中に参加させられました。明治以降途絶えていた花魁道中への参加は、白縫にとって肉体的にも精神的にも大きな苦痛でした。

翌1915年4月10日、白縫は客として来ていた相場師の紹介で、銀座の救世軍本部へ自動車で駆け込み、救済を求めました。当時、救世軍で担当をしていた伊藤富士雄と共に警察に赴きましたが、その後、角海老の楼主に連れ戻されそうになります。しかし、白縫は自分の境遇と廃業を強く訴え、交渉の末、ついに廃業が受理され自由の身となりました。

白縫の行動は、当時大きな社会問題となっていた遊郭の現状を世間に知らしめるきっかけとなりました。救世軍の山室軍平は、この事件を受け、当時の警視総監であった伊沢多喜男に花魁道中廃止の陳情を送り、その結果、花魁道中は禁止されることになります。この事件は、廃娼運動を活発化させ、多くの人々が遊郭の現状に目を向けるようになりました。また、白縫の境遇を題材にした作品も世に出回り、大きな反響を呼びました。

白縫はその後、自身の借金の一部を支払ってくれた男性と結婚し、故郷である広島に帰郷しました。

参考文献

『大正 吉原私記』 波木井晧三 著 青蛙房 1978年

関連項目

救世軍

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