白蘭王

白蘭王とは

白蘭王（びゃくらんおう）は、大元ウルスの支配下にあったチベットにおいて、サキャ派のコン氏に与えられた重要な称号です。この称号は、元朝が設定した王号の序列の中で第3位に位置づけられており、金印駝紐と呼ばれる象徴的な地位を持っていました。

歴史的背景

1240年代、コデンが見込んだモンゴル軍によるチベット高原への進攻が本格化すると、サキャ派の指導者であるサキャ・パンディタは、モンゴルとの関係を築くために甥のロドゥ・ギェンツェンとンガーダク・チャクナ・ドルジェを連れてコデンのもとを訪れました。モンゴル側はチャクナ・ドルジェに対して、モンゴルの服装と共に自身の娘を与え、「駙馬」（キュレゲン）として特別な地位を与えました。

モンゴル帝国の動向が変わる中、クビライが即位すると、パクパとチャクナ・ドルジェの兄弟は重要な役割を果たすこととなります。チャクナ・ドルジェは「全チベットの支配を命じられ」、白蘭王の称号を受け取りました。彼は1265年にチベットに帰りましたが、わずか2年後の1267年には急逝しました。

歴代白蘭王

チャクナ・ドルジェが亡くなると、彼の血筋が白蘭王の地位を引き継ぎます。その後、彼の弟の孫であるロプン・ソナム・サンポが次の白蘭王となりました。ソナム・サンポは南宋のマンジで生まれ、若いころに北方で国公となりました。彼はゲゲーン・カアンの娘を娶り、その結果、1321年に白蘭王に任命されました。

ソナム・サンポの死後、弟のクンガ・レクペー・ギェンツェン・パルサンポが白蘭王を継承しました。クンガ・レクペーについての詳しい記録は少なく、彼が興したドゥムチョェ家はその後のサキャ派の分裂時において重要な存在となりました。彼の息子タクパ・ギェンツェン・パルサンポも白蘭王として名を馳せましたが、彼は歴代の王たちのようにモンゴルの公主を娶ることはありませんでした。

タクパ・ギェンツェン・パルサンポの時代には、サキャ派が内部で分裂し、崩壊していく時期に入ります。このような状況下で彼が「白蘭王」としての権威を持ち、サキャ派の復興運動を展開するような記録は存在しません。結果的に、白蘭王の地位は実質的な政治力を持たない象徴的な役割に過ぎなかったと考えられています。

まとめ

歴代の白蘭王の記録は乏しく、特にテクノロジーの変化や外部の影響により、サキャ派は次第に力を失っていきました。その中で、白蘭王の地位はモンゴルとの結びつきを示すものとしての重要性がありましたが、実際的な統治能力に欠けるものであったことが継続的に指摘されてきました。歴代の白蘭王は、名目上の王位として、この地位を保持することができたのです。

もう一度検索