百十郎桜

各務原市のシンボル、百十郎桜

岐阜県各務原市を流れる新境川沿いを彩る「百十郎桜」は、市内を代表する景勝地のひとつです。1963年（昭和38年）の各務原市発足に合わせ、多くの桜の苗木が植樹されました。その後、1983年（昭和58年）、地元出身の歌舞伎役者である市川百十郎氏に因んで「百十郎桜」と名付けられました。

百十郎桜の歴史は、市川百十郎氏の深い郷土愛と、幾多の困難を乗り越えてきた物語でもあります。市川百十郎氏は1931年（昭和6年）と1932年（昭和7年）に、新境川の建設工事で犠牲になった人々の冥福を祈念し、合計1200本の吉野桜を寄贈しました。この桜は新境川の堤防に植えられ、人々に親しまれるようになりました。しかし、太平洋戦争中の物資不足により多くの桜が伐採され、その数は激減しました。戦後も、桜の数は少ないままでした。それでも、人々の努力により、新たな苗木が植えられ、現在の壮大な桜並木へと成長しました。

現在では、1000本を超える桜が咲き誇り、その見事な景観は多くの人々を魅了しています。春の開花時期には、大勢の花見客が訪れ、賑わいを見せます。毎年約20万人が訪れる「桜まつり」が開催され、にぎやかなイベントも楽しめます。

百十郎桜は、その美しい景観だけでなく、歴史的にも貴重な存在です。1990年（平成2年）には「日本さくら名所100選」に、2003年（平成16年）には「飛騨・美濃さくら三十三選」にも選定されました。これらの選定は、百十郎桜の価値の高さを示すものです。

各務原市は、百十郎桜の保全と発展に力を入れています。2008年度（平成20年度）から桜並木の延長工事が行われ、2012年度（平成24年度）には、総延長31kmに及ぶ壮大な「桜回廊」が完成しました。これにより、各務原市は日本最大の桜回廊都市として知られるようになりました（ただし、桜回廊の延長については、他都市との比較で異なる見解もあります）。

百十郎桜は、単なる桜並木ではありません。それは、歴史、自然、人々の思いが一体となった、各務原市の象徴であり、未来へと繋がる大切な遺産です。その美しい花びらは、毎年春になると、訪れる人々に感動と希望を与え続けてくれます。

関連書籍

『さいたさいた百十郎桜』赤座憲久・作、田中槙子・絵（新日本出版社、1994年7月）
『百十郎桜分布図』百十郎桜保全ボランティア / 編（百十郎桜保全ボランティア、2002年）

参考サイト

新境川の「百十郎桜」が満開 - 各務原市
百十郎桜の歴史 - 各務原市
* 桜回廊都市計画 (各務原市公式ウェブサイトのアーカイブ)

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