百瀬孝

百瀬孝氏は、1938年生まれの日本の福祉学者・歴史学者です。栃木県で生まれ、1962年に東京大学教育学部教育学科を卒業後、八幡製鐵株式会社（現在の日本製鉄）に入社しました。1994年に同社を退職した後、研究者としての活動を本格化させ、仙台大学教授、群馬医療福祉大学教授、早稲田大学現代政治経済研究所特別研究員を歴任しました。

百瀬氏の研究は、福祉学と歴史学の融合を特徴としており、特に日本の福祉制度史、老人福祉史、戦前期・戦後期の日本史に関する研究で多くの業績を上げています。その研究は、制度の歴史的変遷を詳細に分析し、現代の福祉問題に対する深い洞察を提供しています。

著書には、『事典昭和戦前期の日本 制度と実態』(1990年)、『事典昭和戦後期の日本 占領と改革』(1995年)などがあり、昭和期の日本社会の制度や実態を多角的に分析しています。また、『日本福祉制度史 古代から現代まで』(1997年)では、日本の福祉制度の歴史を古代から現代まで包括的に描き出し、『日本老人福祉史』(1997年)では、日本の老人福祉の歴史的発展を詳細に分析しています。

そのほか、『内務省 名門官庁はなぜ解体されたか』(2001年)では、内務省の解体という歴史的事件を分析し、『「社会福祉」の成立 解釈の変遷と定着過程』(2002年)では、社会福祉という概念の歴史的変遷を考察しています。また、『緊急生活援護事業の研究 1945～46』(2006年)では、戦後の混乱期における緊急生活援護事業の実態を明らかにするなど、戦後日本の社会保障政策についても詳細な研究を行っています。

さらに、歴史学者としての側面から、『史料検証日本の領土』(2010年)では、日本の領土問題に関する史料を検証し、歴史的事実に基づいた議論を展開しています。また、『戦前期領土問題資料集』(2013年)では、日本の領土問題に関する貴重な資料を集成し、研究に大きく貢献しています。

共編著・監修としては、『介護支援サービスと介護保険』(1999年)、『ケアマネジメント 社会資源の活用と介護支援サービス』(2002年)など、介護保険制度やケアマネジメントに関する実務的な研究にも関与しています。また、『戦後の日本を知っていますか? 占領軍の日本支配と教化』(2007年)、『戦前の日本を知っていますか? しくみから読み解く昔の日本』(2007年)では、戦前・戦後の日本の社会構造や歴史に関する理解を深めるための監修を行っています。

これらの著作を通じて、百瀬孝氏は、福祉学と歴史学の両分野において、日本の社会構造や福祉制度の変遷に関する深い洞察を提供しています。彼の研究は、歴史的な視点から現代社会の課題を捉え、より良い社会を築くための重要な示唆を与えています。

もう一度検索