百目

百目（ひゃくめ）

概要

百目は、全身に無数の目を持つとされる日本の妖怪です。水木しげるの著書によると、昼間はまぶしいため夜に活動することが多く、人に遭遇すると、その無数の目の一つが飛び出し、後を追ってくるという言い伝えがあります。また、口に相当する部分も目で構成されているため、どのように食事をするのかは不明とされています。

起源とデザイン

百目という妖怪の形態は、昭和中期に創作されたものであり、当時、妖怪や特撮番組の記事制作に関わっていた大伴昌司は、百目は水木しげるが考案したと明言しています。水木しげる原作の特撮テレビ番組『悪魔くん』に登場した「妖怪ガンマー（眼魔）」が、雑誌などで「百目妖怪ガンマー」あるいは「百目ガンマー」と表記され、後に水木自身の著作に「百目」として収録されたという指摘もあります。しかし、ガンマーの設定は「百目」とは大きく異なり、人や遺体の目を奪う妖怪とされています。したがって、ガンマーと百目はデザインが共通するものの、異なる存在と見なせます。

水木しげるの妖怪図鑑などには、百目が民間伝承に存在するかのように解説されていますが、民俗資料における出典は確認されておらず、水木しげるによる創作である可能性が高いとされています。

水木しげるによって描かれた百目は、水木しげるロードのブロンズ像などにも見られますが、これは水木のオリジナルデザインではなく、「百目」とされる絵画が先行して存在していました。妖怪研究家の村上健司は、百目のデザインの参考となったのは、江戸時代末期から明治時代初期にかけて描かれた「百目鬼」という絵ではないかと指摘しています。この絵は、ネットー&ワグネル共著の『日本のユーモア』（1910年）に掲載されたもので、「DER HUNDERTAUGIGE」（100の目を持つもの）とキャプションが付されています。この絵が、ガンマーや百目のデザインに活用され、名称の由来となったと考えられています。

『日本のユーモア』に掲載された絵画の典拠や所蔵は不明ですが、ほぼ同じ図案の肉筆画稿「百々眼鬼」も存在しています（個人蔵）。この絵は、画風から葛飾北斎の門弟の作と考えられています。

関連作品と影響

水木しげるの漫画『悪魔くん』のリメイク版やアニメでは、主人公の味方として「百目の子」が登場しました。また、全身に無数の目があるという強烈な外見から、キャラクターモチーフとして採用されることも多く、特撮作品の敵キャラクターとして登場することも多いです。

まとめ

百目は、水木しげるの創作した妖怪として知られていますが、そのデザインには既存の絵画が影響を与えていると考えられます。全身に無数の目を持つという特徴的な姿は、多くの創作物に影響を与え、現在でも様々な形で登場しています。この妖怪の起源とデザインの変遷を理解することで、日本の妖怪文化の多様性と創造性をより深く理解することができます。

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