百葉箱

百葉箱（Instrument shelter）

百葉箱は、気象観測のために設置される温度計などの観測機器を日射から遮蔽し、雨や雪から保護する装置です。この装置は観測を行うための露場に設置されます。

歴史

気温の測定方法の標準化は19世紀に入ってから進んだものの、当初はさまざまな問題がありました。例えば、昼間の太陽光が測定に与える影響をどう除去するかが主な課題でした。18世紀前半には、イギリスの気象学者グレーシャーが開発したグレーシャー・スタンドが広く使われていましたが、このスタンドでは温度計を手動で回転させる必要がありました。この手間を解消するために、1863年にスコットランドの灯台設計者トーマス・スティーブンソンが発明したスティーブンソン・スクリーンが考案され、これが現代の百葉箱の基本形となっています。

スティーブンソン・スクリーンは、太陽光を遮るだけでなく、風通しも確保されているため、気象観測に適しています。イギリス気象学会が1873年に推奨したことから、以降多くの国で使用され続けています。しかし、スティーブンソン・スクリーンには熱慣性による放射の影響があり、これが測定結果に誤差をもたらすことが指摘されています。

日本での百葉箱

日本では1872年に工部省測量司が気象観測事業を計画し、その翌年にイギリスから最新の観測機器が到着しました。当初は「二重百葉窓の箱」と訳されていましたが、1886年に制定された気象観測法で「百葉箱」として定着しました。1953年には小学校の校庭にも百葉箱が設置され、理科教育の一環として利用されるようになりました。

1993年からは、気象庁は百葉箱による気温観測を廃止し、代わりに強制通風装置を用いるようになりました。しかし、百葉箱に代わる現代版の装置も登場し、データを自動で送信する方式が採用されるようになったのです。

また、面白いことに大阪市営地下鉄のプラットフォームにも百葉箱が設置され、駅構内の温度環境を観測する役割を担っていました。しかし、技術の進化に伴い、測定機器に百葉箱を必要としなくなり、2012年以降一部は撤去されています。

百葉箱の仕様と種類

一般的なスティーブンソン式の百葉箱は、以下のような工夫がなされています。

• - 良質な木材で作られ、熱を外に伝えにくい。
• - 放射熱を遮るため、外側は白色に塗装されている。
• - 十分な通風を確保するため、側面は二重の鎧戸、天面や底面はすのこ張りの二重構造となっている。

さらに、側面の鎧戸には双葉式と単葉式があり、屋根の形状には両屋根式と片屋根式があります。観測データの一貫性を保つため、国際的には地上1.25〜2.0mの高さで設置されることが基準とされています。ただし、百葉箱の内部温度は外気温と一致しないことがあり、特に昼間にはやや高く、夜間にはやや低い値が出やすいという特性があります。

小学校における理科教育

1947年から全国の小学校において気象観測の一環として百葉箱が設置され、発展してきました。現在では百葉箱が「気象の学習用具」として位置づけられており、新しい技術を活用した観測方法も取り入れられています。しかし、その必要性は状況によって変化しており、近年ではより正確なデータを求める声が高まっています。

おわりに

百葉箱は、天候観測の基本装置として多くの国で使用されてきましたが、技術の進歩とともにその使用方法も進化しています。今後も教育現場などでの活用が期待されています。

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