百間山渓谷かもしか牧場

百間山渓谷かもしか牧場は、和歌山県田辺市熊野に位置する市営のニホンカモシカの飼育施設でした。大塔村にある百間山渓谷のハイキングコースの入り口からアクセス可能で、1971年に開園しました。この牧場はニホンカモシカの繁殖と保護を目的としており、環境省と文化庁からの許可を得て運営されていました。牧場は自然環境を活用した面積4,200平方メートルの山の斜面に適した場所に設けられており、地域の観光資源としても重要な役割を果たしていました。

ニホンカモシカは国の特別天然記念物に指定されており、その独特の姿勢と行動から、多くの訪問者を惹きつけていました。特に1978年には13頭が飼育され、その可愛らしさから大塔観光協会のシンボルキャラクターに採用されるほどの人気を誇っていました。しかし、飼育環境や病気、怪我の影響でその後の頭数は年々減少し、2003年には3頭、2010年の春には最後の1頭となった「ムサシ」を残すのみとなりました。

このような状況に加え、2011年の紀伊半島大水害が牧場運営に大きな影響を及ぼしました。この災害により、牧場周辺は警戒区域に指定され、飼育されていたカモシカの「ムサシ」が孤立する事態に見舞われました。牧場へのアクセス道路が寸断され、管理事務所が濁流で流されてしまったため、飼育はほぼ不可能になりました。結果、「ムサシ」は富山市ファミリーパークへ避難させられることとなりましたが、2017年11月に避難先で亡くなってしまいました。

その後、田辺市では市議会が開かれ、2021年12月には百間山渓谷のキャンプ村を再開する議案が提出されましたが、牧場は廃止されることに決定したのです。廃止が決まったことで、地域の文化や観光にとって重要な施設が失われることとなりました。

営業情報については、かもしか牧場は年中無休で平日は9時から16時まで開園していました。バリアフリーの設備も整っており、車椅子利用者にも配慮した作りとなっていました。料金は大人310円、子供150円であり、20人以上の団体には割引が適用される仕組みがありました。このように、百間山渓谷かもしか牧場は地域の観光地として長い期間愛されてきましたが、自然災害や飼育の困難さから閉鎖に至ったのが残念な歴史となっています。

現在、かもしか牧場はその歴史と共に思い出される存在となっており、地域住民や訪問者にとって愛されていた施設と言えるでしょう。

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