皆はこう呼んだ、鋼鉄ジーグ

『皆はこう呼んだ、鋼鉄ジーグ』（原題: Lo chiamavano Jeeg Robot）は、2015年に公開されたイタリアのヒーローアクション映画です。ガブリエーレ・マイネッティ監督の長編デビュー作であり、クラウディオ・サンタマリア、イレニア・パストレッリらが出演しています。

概要

本作は、永井豪原作のSFロボットアニメ『鋼鉄ジーグ』からインスパイアされた作品です。1975年に日本で放送され、1979年にはイタリアでも放送されたアニメ版『鋼鉄ジーグ』は、イタリアのサブカルチャーに大きな影響を与えました。

映画の主人公は、サイボーグでも巨大ロボットのパイロットでもありません。放射性廃棄物によって超人的な力を得たチンピラという設定が異彩を放っています。劇中には、アニメ『鋼鉄ジーグ』の日本版映像が引用され、オマージュが捧げられています。

イタリアのアカデミー賞であるダヴィッド・ディ・ドナテッロ賞では、最多16部門にノミネートされ、主演男優賞（クラウディオ・サンタマリア）、主演女優賞（イレニア・パストレッリ）、助演男優賞（ルカ・マリネッリ）など、7部門を受賞しました。

原作者の永井豪は、本作について「犯罪と汚職まみれのローマの下町で、アニメヒーロー『鋼鉄ジーグ』に憧れる女性の為、正義の戦いに立ち上がる“男の純情”が美しい!! 『ガンバレ、君は鋼鉄ジーグだ!!』」とコメントを寄せています。

NHK Eテレ『旅するイタリア語』でも紹介され、「日本とイタリアのサブカルチュアの橋渡しとなる作品」と評されました。

あらすじ

物語の舞台は、爆弾テロが頻発し、人々が不安に怯えるローマ。窃盗で日銭を稼ぐチンピラのエンツォは、警察の追跡から逃れるため、川に飛び込みます。そこで放射性廃棄物のタンクに誤って落ちてしまい、体調に異変を感じ始めます。

ある日、エンツォは、麻薬取引に巻き込まれ、その現場でセルジョという男が殺されてしまいます。自身も銃弾を受け、工事現場から落下したエンツォですが、無傷で生還し、鋼鉄の肉体と怪力を手に入れたことに気づきます。しかし、その力はATM荒らしに使われ、エンツォは「スーパークリミナル」としてネット上で有名になってしまいます。

一方、マフィアのボスであるジンガロは、「スーパークリミナル」の出現に苛立ちを募らせ、セルジョの娘であるアレッシアを拷問しようとします。そこへエンツォが現れ、アレッシアを救出します。アレッシアは、母親を亡くし、父親が収監された過去を持ち、アニメ『鋼鉄ジーグ』に心の支えを求めて生きていました。彼女は、エンツォを『鋼鉄ジーグ』の主人公である司馬宙と重ね合わせ、慕うようになります。

アレッシアは、エンツォに力を人々のために使うように懇願します。最初は戸惑うエンツォでしたが、アレッシアと『鋼鉄ジーグ』のDVDを鑑賞するうちに、徐々に心境が変化していきます。しかし、エンツォの身勝手な行動や、アレッシアの父親を見殺しにしたことを知ったアレッシアは、深く傷つき、エンツォのもとを去ります。

アレッシアを追いかけたエンツォは、過去の過ちを謝罪し、彼女を父親の元へ連れて行きます。そこで、アレッシアが父親から性的虐待を受けていたことを知ります。エンツォは、自身の過去を告白し、アレッシアのために生きていきたいと伝えます。

一方、ジンガロは、スーパーパワーを手に入れるべく、エンツォを襲撃し、アレッシアを人質にとります。エンツォは、アレッシアを救うため、ジンガロを放射性廃棄物の不法投棄現場へ誘導します。しかし、ジンガロは川に飛び込むことを拒否し、エンツォに廃棄物のタンクを引き上げるように命じます。そこへ、ジンガロを殺そうとするヌンツァが現れ、銃撃戦が勃発。アレッシアは瀕死の重傷を負い、エンツォに「人々のために戦って」と告げて息絶えます。

アレッシアの死後、ジンガロもスーパーパワーを得て復活し、テロを予告します。エンツォは、アレッシアの遺志を継ぎ、ジンガロを止めるため、戦うことを決意します。

最終決戦の舞台は、サッカー試合会場のコロッセオ。エンツォとジンガロは、激しい戦いを繰り広げます。エンツォは、ジンガロから爆弾を奪い、人々のいない川へ放り込もうとしますが、ジンガロに阻止されます。もみ合いの中、エンツォはジンガロと共に川へ飛び込み、爆弾を水中で爆破させます。ジンガロは死亡し、エンツォは姿を消します。

エンツォはヒーローだったのか、ただのチンピラだったのか。人々の議論が続く中、「ジーグ」のマスクを被った男が、夜の街へと飛び込んでいくのでした。

キャスト

エンツォ：クラウディオ・サンタマリア
アレッシア：イレニア・パストレッリ
ジンガロ：ルカ・マリネッリ
セルジョ：ステファノ・アンブロジ
* ヌンツィア：アントニア・トルッポ

オマージュ

劇中には、『鋼鉄ジーグ』の映像やポスターが登場し、エンドロールでは、クラウディオ・サンタマリアがイタリア語で歌う『鋼鉄ジーグ』の主題歌が流れます。

もう一度検索