盆ダンス

盆ダンス

「盆ダンス」は、日本の歌手、橋幸夫が2005年2月18日にビクターエンタテインメントから発表した通算171枚目のシングル作品です。このシングルは12cmCD（規格品番：VICL-35779）とカセットテープ（規格品番：VISL-30591）の二つの形態で発売されました。

楽曲概要と制作背景

2005年は、橋幸夫が歌手デビューを果たして45周年を迎える記念すべき年でした。「盆ダンス」は、まさにそのアニバーサリーイヤーを飾る記念楽曲として制作され、シングルのジャケットにもその旨が明記されています。楽曲の作詞は木下龍太郎、作曲は谷口尚久が担当しており、両名とも橋幸夫の楽曲を手がけるのはこれが初めてのことでした。

この楽曲の誕生には、橋幸夫自身の個人的な経験が深く関わっています。当時、認知症を患っていた母親を介護する中で、ある専門家から「踊りには人間に本来備わっている自己を癒す力がある」「お母様を踊らせてみてはいかがでしょう」といったアドバイスを受けたことが、彼の心に強く響いたと言います。この言葉が、歌と踊りを通して人々を元気づけたいという思いを具体化させる大きな契機となりました。

橋幸夫は以前から日本の伝統文化、特に祭りへの深い愛情と、その復権にかける情熱を持っていました。2002年には「ねぶた節」、2004年には「燃えろ水戸の夏まつり」といった祭りに関連する楽曲を自身で作曲し発表しており、その取り組みは既に始まっていました。そしてデビュー45周年という節目にあたり、彼は改めて「日本の文化の根源は祭りにあり、中でも夏祭りは最も身近で親しみやすいもの。その夏祭りのイメージをさらに広げ、もっと多くの人々が、気軽に、そして世代や立場を超えて一体となって楽しめるような踊りの世界を創り出したい」という強い願いを「盆ダンス」に込めました。

楽曲の振付は、橋幸夫の兄弟弟子にあたる花柳糸之が担当しています。

カップリング曲

このシングルには、「盆ダンス」の他に「優駿の風」と「テムジン～蒼き狼の伝説～」の二曲がカップリング曲として収録されています。これらの楽曲は、2004年に橋幸夫がモンゴル政府から親善大使の依頼を受け、実際にモンゴルを訪れた経験から生まれました。広大な草原やモンゴル文化に触れる中で、特に馬頭琴の響きに深く感銘を受けたことが、楽曲制作のインスピレーションとなりました。

特に「優駿の風」は、2005年3月から開催された国際博覧会「愛・地球博」において、モンゴル館の公式テーマソングとして使用され、注目を集めました。「優駿の風」と「テムジン～蒼き狼の伝説～」の両曲とも、作詞は椎名透明、作曲は橋幸夫自身が勅使原煌（てしがはら こう）という名義で手がけています。これは前作「燃えろ水戸の夏まつり」に続く、彼自身の作曲作品となりました。編曲は両曲とも伊豆のりおが担当しています。

収録曲

1. 盆ダンス
作詞：木下龍太郎
作曲：谷口尚久
編曲：伊豆のりお
2. 優駿の風
作詞：椎名透明
作曲：勅使原煌
編曲：伊豆のりお
3. テムジン～蒼き狼の伝説～
作詞：椎名透明
作曲：勅使原煌
編曲：伊豆のりお

主な収録アルバム

「盆ダンス」およびカップリング曲は、その後の橋幸夫のベストアルバムや企画アルバムにも多数収録されています。

『元祖！リズム歌謡』（2005年6月29日）VICL-61686
『橋幸夫ベスト～盆ダンス～』（2005年11月23日）VICL-61820
『ビクター最新歌謡ヒット』（2006年9月27日）VICL-62580
『橋幸夫ベスト～踊り唄～』（2008年11月19日）VICL-63156
『橋幸夫　ザ・ベスト』（2012年7月25日）VICL-63901

この楽曲は、橋幸夫のキャリアにおける重要な位置を占めるだけでなく、彼の人間的な経験や文化への深い洞察が反映された作品と言えるでしょう。

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