益子焼窯元共販センター

益子焼窯元共販センター：益子焼の歩みと変遷を映す老舗販売施設

成り立ち：民芸ブームと産地直販

昭和30～40年代、益子は全国的な民芸ブームと、それに伴う産地直販の動きという二つの大きな変化を経験しました。益子焼窯元共販センターは、この産地直販の中核を担う存在として誕生しました。当時、益子の窯元は塚本製陶所による「釜っこ」生産の下請けからの脱却を図っており、経済的な打撃を受けていました。

この状況を打破するため、陶芸家であり実業家でもあった成井藤夫氏が中心となり、約35軒の窯元に共販センター設立を呼びかけました。最終的に11軒の窯元が参加し、1966年（昭和41年）3月24日、「益子焼窯元共販株式会社」を設立、4月1日に「益子焼窯元共販センター」が開設されました。

設立当初から、成井氏は積極的な宣伝活動を行い、1966年5月には、検査で不合格となったアウトレット商品を格安で販売する「陶器市」を開催。このイベントは予想以上の成功を収め、春のゴールデンウィークの恒例行事となり、現在の「益子陶器市」へと発展していきました。

発展：多角経営と益子焼の象徴

1966年の本店建築を皮切りに、共販センターは順調に発展していきました。売店の増設、ギャラリーの併設による若手作家の支援、陶芸教室の開設、喫茶店や食堂の営業開始、東京出張所の設置など、事業内容を拡大し、一時は「日本最大の陶器販売センター」と呼ばれるまでに成長しました。

1977年、成井氏は社長を退任し、翌年には別の益子焼販売施設「益子陶芸村」を設立しました。1986年には、共販センター駐車場に高さ10mのタヌキ像「ぽんたくん」が設置され、益子のシンボルとして親しまれるようになりました。

益子陶器市開催時には、共販センターはメイン会場となり、多くの観光客が訪れました。年間130万人の益子観光客のうち、95万人が共販センターに立ち寄っていたと言われています。

現在：時代の変化と新たな挑戦

しかし、時代の変化とともに益子焼の需要は減少し、共販センターの売上も低迷しました。2019年末からのコロナ禍はさらに打撃を与え、現在では新館売店以外の売り場は閉鎖され、食堂なども閉店しています。公式サイトの情報と現状にずれが生じている状況です。現在では、益子陶器販売通りの大型駐車場としての役割も担っています。

2020年には、「ぽんたくん」の改修費用を募るクラウドファンディングを実施。2021年には、「共販ミニ陶器市」を開催し、2022年の春のゴールデンウィークには「益子陶器市」が復活しました。

参考文献

株式会社無尽蔵『益子の陶工　土に生きる人々の語らい』(1980)
芸術新潮編集部 著『日本やきもの紀行』(1985)
日本放送出版協会『日本のやきもの 伝統の窯元を訪ねて【東日本編】』(1987)
矢野良明,他『やきもの大百科 第１巻 東日本編』(1990)
倉本秀清『益子探訪　－益子の陶芸家に学ぶ－』(1992)
JTB『やきものの旅 東日本』(1993)
真尾栄『益子・笠間やきもの紀行』(1997)
（株）キークリエイション 編『東京周辺　小さな窯元めぐり』(2000)
中島誠之助 中島由美『週刊 やきものを楽しむ』(2003)
枻出版社『焼物の里を訪ねて　益子・笠間　器の里、最新ガイド。』(2009)

外部リンク

益子焼窯元共販センター公式サイト
益子焼窯元共販センター Instagram
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