盗まれた地球

ドクター・フー 第4シリーズ 第12話 「盗まれた地球」：詳細解説

『ドクター・フー』第4シリーズ最終話「旅の終わり」の前編として放送された「盗まれた地球」は、2008年6月28日にBBC Oneで初放送されました。シリーズ製作総指揮ラッセル・T・デイヴィスが脚本を手掛けた本作は、シリーズ全体、そしてデイヴィス在任中の集大成ともいうべき壮大な物語です。

物語の概要

現代の地球、そして他の26個もの惑星が、ダーレク艦隊によって突如として拉致されます。その背後には、誇大妄想に囚われたダーレクの創造主ダヴロスと、未来を予見する能力を持つダーレク・カーンという強力な存在がいました。地球の行方不明を受け、10代目ドクター（デイヴィッド・テナント）とコンパニオンのドナ・ノーブル（キャサリン・テイト）は必死に地球を探し求めます。

一方、ドクターの過去のコンパニオンであるジャック・ハークネス（ジョン・バロウマン）、マーサ・ジョーンズ（フリーマ・アジェマン）、サラ・ジェーン・スミス（エリザベス・スレイデン）、そしてローズ・タイラー（ビリー・パイパー）らが集結。彼らはドクターと連絡を取り、ダーレクに対抗する地球防衛戦を開始します。激しい戦いの末、ドクターはダーレクに致命傷を負い、再生へと向かう衝撃の結末を迎えます。

主要登場人物とゲスト出演

本作には、シリーズのスピンオフ作品『秘密情報部トーチウッド』と『The Sarah Jane Adventures』の主要キャラクターが多数登場し、シリーズ史上初のメジャークロスオーバーを実現しました。 イヴ・マイルズ、ギャレス・デヴィッド＝ロイド、トミー・ナイトといった俳優陣が『ドクター・フー』シリーズに初登場する一方で、アッジョア・アンドー、ペネロペ・ウィルトンといったおなじみの顔ぶれも再出演しています。さらに、進化生物学者のリチャード・ドーキンスやコメディアンのポール・オグラーディといった著名人もカメオ出演を果たしました。

製作過程

「盗まれた地球」と「旅の終わり」の構想は、2006年初頭に始まりました。壮大なスケールと多数のゲスト出演者、そしてデイヴィス、ジュリー・ガードナー、フィル・コリンソンといった主要スタッフの降板という状況の中で、本作は2007年初頭に具体的なプロットが決定されました。脚本は2007年12月にデイヴィスによって執筆され、2008年2月〜3月に撮影が行われました。地球の消失という衝撃的なプロットを隠すため、タイトルの発表は放送直前まで延期されるという徹底ぶりでした。

脚本の執筆と変更点

デイヴィスは脚本執筆中に、多くの変更を加えています。当初はニューヨークがダーレクによって破壊される予定でしたが、現代の地球を舞台とした後のシリーズに影響を与えることを懸念し、変更されました。また、シャドー議会という組織の設定も、当初は銀河間の警察組織という設定でしたが、予算上の理由などから大幅に簡素化されました。ハリエット・ジョーンズ元首相（ペネロペ・ウィルトン）の再登場も、製作スタッフからの要望によって脚本に追加されました。

キャスティング

「盗まれた地球」には19人の主要キャストが登場し、その多くがシリーズのスピンオフ作品からの参加です。特にダヴロスの役にはジュリアン・ブリーチが抜擢され、1988年以来の復活を果たしました。ダーレクの声優にはニコラス・ブリッグズが起用され、異なるダーレクごとに異なる声を演じ分ける高い演技力を披露しています。

撮影

撮影は2008年2月〜3月にかけて行われました。本作では初めて屋外でのダーレク撮影が行われたほか、撮影の大部分が夜間に行われたこともシリーズ初となりました。撮影現場はウェールズを中心に、ロケーション撮影も多数行われました。

ポストプロダクション

ポストプロダクションでは、膨大な量の特殊効果が使用されました。特にニューヨーク侵攻シーンとメデューサ・カスケードの描写は見どころとなっています。音楽はマレイ・ゴールドが担当し、シリーズを通して使用された主要なテーマ曲に加え、本作オリジナルの楽曲も多数制作されました。

放送と反応

「盗まれた地球」は、視聴率、批評家の評価ともに高い評価を得ました。特に、ドクターの再生という衝撃的な結末は、大きな話題を呼びました。視聴者からの評価は非常に高く、多くの賞を受賞しました。批評家からも、物語の構成、演出、演技、そして特殊効果などが絶賛され、高い評価を得ています。しかし、一部の批評家からは、プロットが多すぎる、キャラクターの描写が不十分であるといった指摘もありました。

結論

「盗まれた地球」は、『ドクター・フー』シリーズの中でも屈指の名作とされており、シリーズのファンにとって忘れられないエピソードとなっています。壮大なスケール、魅力的な登場人物、そして衝撃的な結末は、視聴者を惹きつけ、シリーズの成功に大きく貢献しました。

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